11月祭従軍記

(書いた人:ミジンコ)

 

京大構内をある亡霊が彷徨っている──十一月祭の亡霊が。

 

かの十一月祭はもはや3週間前のことである。京大からは魔術的なきらめきと美が失われてしまい、今や講義に出たり出なかったりする学生達が構内を徘徊していたりしていなかったりするのみである。
 しかしその時、そう11月22日から25日の間の十一月祭、その最中に、無機質な大学のキャンパスの一角に、一輪の百合の花が咲いていた。
 そう、卍 † 京都大学百合文化研究会 † 卍、である。今回は11月祭における京大百合文研の活動を振り返らせていただく。お付き合いいただければ幸いである。

 

NF前日(11/21)

 

「待つ間が花」、という言葉があるように、大抵のことは待っている間が一番楽しかったりするものである。個人的には前日も同じくらい楽しかったのだが、まあ始まる前の高揚感というかワクワクとした緊張を持っていられるのはその日までだったので、まあそこらへんのバフが乗っているのだろう。知らんけど。
 前日というのは忙しいもので、講義に出たり出なかったりして、その合間で作業をおてつだいしたりした。空きコマを利用し、ビラを貼りに吉田南構内を弊会の同志らと徘徊していたのだが、もうその時点から既に各サークルなどなどによるビラ貼り戦争が始まっていた。ホッブズ「万人の万人に対する闘争」のフレーズを思い起こすような掲示板であった。昔のイベントの告知などの古いビラの上や、比較的占有されていないスペースの上にスクラムのように弊会のビラを貼った。バラバラに貼るよりも集中的にコロニーを形成する方が効果的である。集団戦法だ。これがおじさんのファランクスだよ。

百合ファランクスの図

そしてビラ貼りの後に私は5限へ。そこでこの後の肉体労働のための英気を養い、終了直後には喜び勇んで集合場所へと自転車で電撃的に前進。私にとってのNFはこの時に幕を開けたのである。しばらく講義に出なくてよくなったので。
 ということでNF0日目、「設営」がやってきた。最も重要にして最も大変な労苦である。何をなすべきか?答えは簡単だ。肉体労働、その一言に尽きる。会員を動員し、まずは運搬を行う。大量の百合姫と漫画をリュックに入れたり手に持ったりして人海戦術で運ばなければならない。すごい量なので一回ですごい量を持って行っても結局はすごい回数漫画の集積地と会場の教室を往復することになった。
 運搬が終われば次は設営とビラ貼りである。ビラ貼りって二百枚以上やるねん。
 一方会場では設営が行われていた。百合姫や会員が持ち寄った漫画を並べ並べ並べ、壁にタペストリーを飾り、ポップを作成し、聖地巡礼の写真を貼りなど多岐に渡る労働に従事した。ある会員は某作品のコミカライズや小説版に加えアクスタなども用意しており祭壇を完成させていた。素晴らしい熱意!
 そのようにいろいろやっているうちになんともう22時。よいこはおうちにかえるじかんである。泊まり込む決死守備隊(総勢二名)を残し撤退せざるを得なくなった。設営の残りや会場の死守を彼らに任せ、明日に迫ったNF開幕を前に設営が完了しない事実に後ろ髪を引かれるような気分を抱えつつも、今日のところはひとまず各々は自らのねぐらへと帰っていくのであった。帰ろう、帰ればまた来られるから。

 

NF一日目(11/22)

NF初日!

 そしてNF開幕当日を迎えた。朝から設営の続きの手伝いのために会場に向かうとその黒板には百合文研お絵描き班による珠玉のまどほむが!!

 



 NF全体を通じてこのまどほむの威力は絶大だったようである。嬉しい。まあ私は一切関われていないのだが……

 会場では朝から開幕の10時に向けてあくせくと準備をした。物資集積地から漫画を持ってきたりレイアウトを整えたり壁に写真等を貼ったり……そしてあらかた準備が終わり、いよいよ開幕を迎えてしまった。朝の10時のことである。どこかから鯨波が聞こえてくる。教室は静かだった。こうして百合文化研究会の十一月祭は静謐の中で幕を開けたのだ。

 私はシフトではなかったのだが、初めて体験するNFなるものに惹かれてなんとなくしばらく会場に佇んでいた。しかし世間的には平日であり、開幕して一番最初にこのサークルに来る人もあまりおらず、10時をわずかに回ったばかりの時間帯では教室の中に音楽が流れるのみで、話に聞くNFの喧騒なるものはまだこの共北31にやってきていなかった。翌日やってきたが。

 

NF2日目(11/23)


何をしていたか記憶にございません。個人的に友人らとNFを見て回ったりちょっとだけ百合文研に顔を出したというぐらいである。といってもフリースペースで「安達としまむら」か何かを拝読させていただいていたぐらいかもしれない。ついでに少しばかり売り子を手伝ったりしたのではなかったか。今のところそんな気がしている。真相は闇の中である。
 この日は山百合会(百合文研OBOG会)の会員の方が督戦においでになった。会誌販売スペースでは売り子としてばっさばっさと会誌を売りさばき、解説役に回ればその知識量で教室を周回し解説を披露するなど八面六臂の大活躍をなさっていた。
月並みだが私も奮闘せねばならないと思った。漫画を読みながらであったが……。(シフトではない時間帯のことなので許してほしい)
 そして二日目終了後(要出典)、督戦隊は明日をめがけて遠く関東へ帰投していった。帽振れー!

 

NF3日目(11/24)

そして私にも勤労動員の時間がやってきた。午前中は英気を養い(寝ていたという訳ではない)、午後からは会場に赴いて労働に従事した。売り子をしていたと思う。売り子以外も少し何かした気がする。自然発生的に生まれた区別だったが、解説委員は会場で作品や展示の解説をして、売り子は会誌販売の対応をするという分業体制が確立されていた。つまりいらっしゃった方々と話をするのは主に解説委員の仕事となっていたわけだが、売り子もコミュニケーションをしないわけではなかった。お金を受け取って会誌などをお渡ししてそれで終わり、ではなかった。道案内もした。質問にもお答えした。普通に百合の話もした。おすすめの百合の話もできる。というかした。しかし今になって思い返してみるとあまり面白いこと言えなかったな、とかあの作品を挙げ忘れたな、とかいろいろ反省点ばかりが見出される。私には百合の知識も教養もまだまだ足りないのである。そう実感し、百合なるものの奥深さを思い知らされたような気分になった。これが三日目のことである。

 

NF4日目(11/25)


最終日にして土曜日である。この日も私は売り子をしていたりしていなかったりした。四日目の部分ともなるともはや特段書くこともあまりない。申し訳ない。四日目は大体二日目と似たような一日になった。督戦隊(二日目にも来ていたOBOG会の方)が再び京都に現れてまたも我々と肩を並べておられた。この日も大活躍であった。当日配布した「共通テスト 百合文化(きらら学)」もその方が作られたものである。私もオタクとしてかくありたい。

 

総括


非常に曖昧模糊とした小学生レベルの感想で恐縮だが、NFはとても楽しいものであった。様々な百合を読んだり読んでいただいたり、多くの方々と交流させていただいたり、会誌や会場での展示等の感想などをインターネットで目にするたびに、このNFに向けた二ヶ月近くに渡る艱難辛苦が報われたような思いを抱いた。
 NFを通じて多くの方に弊会のところに足を運んでいただけた。今回のNFにおける展示や作品の紹介などを通じ、おいでになられた皆様が百合文化について造詣を深められたり、百合について興味を持たれたり、様々に楽しんでいただけたのであれば万々歳である。皆様にもこれからも素晴らしい「百合」との出会いが訪れますように祈っております。

 

 

それでは皆様、ごきげんよう

 

 

・その他会員のコメント

【小凪】ファッ?200枚もビラ貼ったの?お疲れ様です……。

【うらん】私が気まぐれで書いた「会員におすすめの百合を聞いてみよう!」のおかげで、会員が突然推し作品を紹介させられる場面が散見されましたね。私は1度も聞かれませんでしたが。

【点々】我々が想像する以上の全面的で徹底的な文化祭でしたね、自分は中々お手伝いできなかったけれど、お疲れ様でした。

【Cardinal】カイチョーは前日の夜ずっと作業してたせいでNF開催とほぼ同時に家で爆睡し、起きたら1日目終わってました(;ω;)準備は、計画的に、しよう!

【まっつごー】NFレポの発案者です。執筆はミジンコにお願いしたら予想通り彼らしい文体、言葉選びの面白いブログができて嬉しい。