【新歓布教blog第6回】「ときときチャンネル」という視聴体験

かいたひと:きんとん

Justice for Girls. ごきげんよう。
授業もすっかり始まってしまい、気づけばもう5月になってしまいました。GW後も大学には行きましょう。

さて、皆さんは百合SFと言われたとき、何か思い浮かぶ作品はあるでしょうか?
筆者は『Roid -ロイド-』『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』が好きです。一時期百合SFでハヤカワが盛り上がっていた印象がありますが、最近はあまり聞かなくなってしまいました。漫画媒体の百合SFも増えてほしいとずっと願っています。

さあ、今回紹介するのはそんな百合SFのひとつ、『ときときチャンネル 宇宙飲んでみた』(著:宮澤伊織) です。

表紙はめばち先生


宮澤伊織先生といえば、アニメ化もされた『裏世界ピクニック』の方でご存じの方も多いのではないでしょうか。百合SFの話題になった時、真っ先に名前の挙がる作家だと思います。

本記事ではその「ときときチャンネル」について紹介してみたいと思います。

あらすじ

十時さくらは配信サービス《ときときチャンネル》で、同居するマッドサイエンティスト・多田羅未貴の発明品を紹介し、収益化して生活費の足しにすることを思い立つ。マグカップで宇宙を飲み、時間の結晶を飼い、無限に拡張する家の中で迷子になる? トラブルもこみで楽しくお届けし、目指せチャンネル登録者数1000人!全編配信口調と視聴者コメントで語られる、新感覚SF誕生。

(文庫裏表紙より引用)

いわゆる百合SFに分類される作品です。十時さくらさんと、その同居人でかつマッドサイエンティストの多田羅未貴さんの「配信模様」が描かれる連作短編集です。


「配信形式」という面白さ

あらすじの「全編配信口調と視聴者コメントで語られる」という文言に「どういうこと?」となった方もいるでしょう。

簡潔に言うと、この小説には「地の文」がありません。

試し読みをさっと読んでいただけると分かるのですが、一般的な地の文の部分は全て十時さくらさんの発言です。後は視聴者のコメントとかがセリフと出てくるだけ。モノローグなどは一切ありません。

したがって、直接的な「こういう想いがある」という描写も当然存在しません。本文では多田羅さんとさくらさんのやり取りだけが提示され、「読者」はそれを見るだけです。

それ百合的に美味しいんか? と疑問に思うでしょうが、百合的なポイントは十分に敷き詰められています。 つまり提示されるのは関係だけで、百合を見出すのは我々の方です。
例えば配信中では「多田羅さん」と呼んでいるのが、配信を切り忘れて普通に喋っているときは「未貴ちゃん」になっていたりするのがドカ萌えポイントですね。テンポ良く進む会話も気の置けなさを感じて大変よろしい。





――――で、恐らくこういう体験が想定されていると思います。実際にそういう体験をしながら筆者は読みました。

が、しかし、ある可能性に思い至ります。

「これもしかしてVとか観るのと同じ体験……?」

発言したことしかわからない、配信が切れたらそれ以上は読めない、文の開始は配信スタートのシーンから、モノローグなんて書いてないから当然内心なんてわからない…………おや?


筆者は配信者やVに詳しくないので分かりませんが、そちらに興味がある人には特にオススメかもしれません。

www.tsogen.co.jp
全編口語なので小説媒体に慣れていない人にもおすすめ、というかむしろ一番最初に手渡したいかもしれません。
というわけで、『ときときチャンネル 宇宙飲んでみた』ぜひ読んでみてください。かなり変な体験ができることは保証します。

おまけ:

コミカライズもあるぞ!

https://comic-walker.com/detail/KC_007121_S/episodes/KC_0071210000200011_E?episodeType=first

 

【新歓布教blog第5.5回】百合オタクのためのシャニマス入門

かいたひと:きんとん

以前投稿された、百合文研のとある記事はこのような文章から始まります。

アイドルマスターというコンテンツにおいて、百合はサイドメニューにすぎない。

https://ku-yuribunken.hatenablog.com/entry/2026/02/11/222253

うるせ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!
知らね~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!𝐽𝑢𝑠𝑡𝑖𝑐𝑒 𝑓𝑜𝑟 𝐺𝑖𝑟𝑙𝑠.


もくじ


はじめに

Justice for Girls. 新入生のみなさん、ごきげんよう。


やけに難解な入学準備やら何やらで慌ただしい時期もすっかり過ぎ、すっかり5月になってしまいました。もう大学の雰囲気も掴んでいるのではないでしょうか。学部に友人ができたり、入りたいサークルを固めた方も少なくないでしょう。弊会はドアをいつでも開けていますので、ぜひ一度お越しください。

さて、挨拶も済んだところで、ここからはTHE IDOLM@STER SHINY COLORSの話をします。

Image

アイドルマスター。しっかり触れたことはなくとも、ほとんどの方が名前を聞いたことがあるコンテンツでしょう。アニメ、マンガ、ゲーム、リアルライブなどを幅広く展開し、20年の長きに亘って愛され続けているクソデカアイドルコンテンツです。(20年と言えば百合姫と同い年ですが、実はどちらも2005年7月にスタートしている”同期”だったりします)

近年では最新シリーズである『学園アイドルマスター』の隆盛も目覚ましく、常に最前線を走り続けている作品群、という印象があります。筆者は学マスから入ったド新人ですが、それ以前もやはり視界に入り続けていたコンテンツです。


さて今回はそんなアイドルマスターシリーズの一つであり、8周年を迎えた『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下シャニマス)に着目し、これを”百合的な観点から”布教、ないしコミュの提示を行います。

本記事は筆者がシャニに興味を持ったとき、百合好き向けのマップが見当たらずそこそこ大変な思いをしたがために生まれた記事です。同時に、本記事で紹介される内容は全ていち百合オタクの主観と独断と経験と偏見のみに基づいていることをここに宣言します。ご理解ください。

(つまり、「百合好きで」かつ「シャニマスを読もうとしている」人が対象の記事です。本記事が第5.5回になっているのは、ターゲットをかなり絞ってしまった自覚があるためです)


では、やっていきましょう。

【重要】それなりに量があります。本記事もコミュも、全部読む必要は全くないです。

※本記事ではゲームシステムやプレイ方法についての解説は行いません。調べれば参考になる記事がたくさん出てくると思うので、そういった記事も見ながら読み進めるのをオススメします。

※また、本記事はシャニマスにドハマりして4か月ぐらいの初心者オタクが書いています。(MOIW2025ありがとう)「初心者による初心者のための布教記事」という意味もあるので、玄人の方は生暖かい目で眺めていただけると幸いです。



本記事の対象読者

・シャニマスを始めたものの、どう読み進めればいいか分からない百合好き

・学マスでカップリングを愛好しており、他マスにも興味のある人

・シャニマスのことはわからないが、デケえ百合を探している百合オタク

・オタクがベラベラ書いているのを見たい人

新入生は?

本記事の目的

シャニマスに興味を持った百合オタクを引きずり込むことです。何も知らない人に魅力を説明するというより、少し興味を持っている人間を引きずり込むための準備です。

本記事で扱う用語

コミュ:
慣例にならい、シナリオやカードに付属する小話のことをまとめて”コミュ”と呼称します。本記事では、

  • 「共通コミュ」(アイドルごとのメインシナリオ)
  • 「カードコミュ」(カードに付属する小話。アイドルの根幹に触れるものも多々ある)
  • 「イベントコミュ」(通称イベコミュ。ユニット内での関係にフォーカスしたもの)

の3つを中心として解説します。なお、コミュやその解放方法については以下が詳しいです。

note.com

シャニマス:
「シャニマス」と一口に言っても「enzaシャニマス」(ブラウザゲー)と「シャニソン」(音ゲー)があるのですが、本記事ではブラウザゲーとしてのシャニマス(=enza)を扱います。シャニソンも興味があったらやってくださいね。ソンのおすすめコミュは『エコオトピア』です。

また、本記事ではそれぞれのコミュに対し、☆の記号で「筆者がどれぐらい読んでほしいと思っているか」を表現します。(≠評価)

(正直こういう区分はあまりしたくないのですが、最善の選択肢として常にある「全てを読む」は不可能に近いので、苦肉の策としてこの手段を採っています。客観的なものではないことに注意してください。)

時間的な余裕がない方などはこれを参考にどうぞ。

★★★★★:大トロ。ぜひとも読んでほしい。

★★★★☆:読んでいればさらに楽しくなるので読んでほしい。

★★★☆☆:急ぎでないのなら、ぜひ読んでほしい。

シャニマスについて

shinycolors.idolmaster.jp

shinycolors.enza.fun

シャニマスの世界についても軽く説明しておきましょう。彼女らが所属するのは283(ツバサ)プロダクションという芸能事務所。ユニット単位での活動を主軸としており、コミュも基本的にはユニット内の関係性や、個人の内面の掘り下げがメインです。シャニを百合のオタクに勧めたいのはそういうわけです。

また、ゲーム媒体という特性もあって、コミュは「物語」というより、「エピソードの集積」という面が強いです。生きてることは……物語じゃ……ないから…………
時系列はありますが語られるものはあくまで断片に過ぎず、各アイドルの人格やそれに伴う百合的な理解は、読者の脳内でこそ立ち現われます。

何を言っているのか分からないとは思いますが、散らばっていたピースが突然全て嵌まり、頭の中でアイドルの人格、そしてCPがハッキリ見える瞬間があります。本記事はそれをサポートするためのものです。

いくぜ!


イルミネーションスターズ

?「シャニで好きなカップリングは?」
おれ「𝒊𝒍𝒍𝒖𝒎𝒊𝒏𝒂𝒕𝒊𝒐𝒏 𝑺𝑻𝑨𝑹𝑺」


シャニマスの看板ユニット、イルミネーションスターズさんです。櫻木真乃さん、風野灯織さん、八宮めぐるさんのいわゆる”サンコイチ”的な関係性が魅力です。

三人ともが他の二人を大好きだと想い合っており、コミュでのやり取りも微笑ましいものが多いです。時には自分たちの関係にも向き合いながら、時間と対話を積み重ねていく様子は誰しもに目撃していただきたいものです。『ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス』をよろしくお願いします。

百合オタクの中でも、特に𝑯𝒂𝒑𝒑𝒚で𝑺𝒘𝒆𝒆𝒕なカップリング萌えを主軸にしている方に勧めたいところ。三人で見事なトライアングルを形成しており、特にカードのコミュは健康に良いものが多いです。

個人について掘り下げたWING~STEPも読むと嬉しいのですが、ユニット内での関係に興味があるのならやはりイベコミュがメインになるでしょう。一応それら共通コミュの位置も示しておきます。

さて、オススメするコミュは以下の通りです。イルミネさんは時系列が強固でないので基本どこから読んでも大丈夫だと思いますが、一応実装順に並べておきます。

(WING)
Light up the illumination
Catch the shiny tail
(ファン感謝祭)
【チエルアルコは流星の】八宮 めぐる
Star n dew by me
(GRAD)
くもりガラスの銀曜日
【まわる音色、君色のかおり】櫻木 真乃
(Landing Point)
【幾星霜の先に】風野 灯織
【スローリー・メモリー】八宮 めぐる
【オールウェイズ】八宮 めぐる
ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス
【だいすきだよ】櫻木 真乃
【花かんむりをあなたへ】八宮 めぐる

Light up the illuminationImage

区分:イベコミュ

おすすめ度:★★★☆☆

シャニマス最初のイベコミュ。イルミネーションスターズさんの結成譚が語られます。トップバッターということもあって、雰囲気の紹介という面も強いと思います。今でこそ大の仲良しのお三方ですが、少しずつ距離を詰めていくフェーズはちゃんとあったのです。

Catch the shiny tailImage

区分:イベコミュ

おすすめ度:★★★★☆

「真乃は、わたしの隣にいてほしいっ」

アイドルユニット・イルミネーションスターズ。センターを任されているのは真乃さんです。しかし真乃さんは、どうして自分がその立ち位置なのか掴めず、悩んでしまいます。
イルミネさんにとっての「センター」の意味。真乃さんを中心に、その意味を自分たちで定義していく話です。以降の三人の関係に、一つの方向性を与えるコミュだと思います。大好きなコミュ。

【チエルアルコは流星の】八宮 めぐる

区分:p-SR(恒常)

おすすめ度:★★★★☆

イルミネさんの話、というよりかはめぐるさんの話です。後ろで紹介するStar n dew by meにボコボコに殴られるためにぜひ読んでほしいです。
めぐるさんの自他に対する意識はいささか特徴的で、彼女がイルミネにいることの嬉しさが上がると思います。
これはシャニマス全体に通底していると思うのですが、各アイドルの多面性を大切にしているように感じられます。だれかを一つの属性や記号で語るのは容易ですが、人は往々にして複数の面を持っています。そういったシャニマス的な価値観を示すコミュでもあるので、読み方に慣れるという意味でもおすすめかもしれません。

ちなみにチエルアルコ=ĉielarkoは、エスペラントで「虹」という意味です。


そのうち読みたい:【わがままサンライズ】(p-SSR 八宮めぐる)

Star n dew by meImage

区分:イベコミュ

おすすめ度:★★★★★

「真乃と灯織は、わたしの……特別……」

オニゴッコ番組の企画で、学園祭にお呼ばれされた三人。学園祭を楽しみながらオニから逃げるものの、捕まっためぐるさんがオニ側になってしまい――――。

『Catch the shiny tail』が真乃さんの位置を示すものであったのなら、これはめぐるさんの位置を示すものでしょう。イルミネーションスターズという空間で、めぐるさんが真乃さんと灯織さんのそばにいる「意味」を教えてくれるコミュです。あまりにも真っすぐに語られる「あなたが好き」が強力です。

読み終わったらWe can go now!を聴いてください。後生です。

くもりガラスの銀曜日Image

区分:イベコミュ

おすすめ度:★★★★☆

「私、ふたりと一緒にいられることがうれしいんだ」

このコミュ、何か劇的なことが起こるわけではないのですが……””に振り切った空気感がとてもいいのです。イルミネさんの時間の積み重ねが見えるコミュです。

イルミネさんは外から見ても大の仲良しで、もうお互いに知らないことなんてないのではないかと錯覚してしまいそうになります。けれど、実のところは三人はそれぞれが「他者」であることにそこそこ自覚的に思えます。

ひとの心の手前に置かれた「くもりガラス」を前にして、どういう態度を取るのかがすごく素敵なコミュです。

あとたい焼きの話もします。

たい焼きの話をする百合はいい百合

【まわる音色、君色のかおり】櫻木 真乃

区分:s-SR 

入手手段:ショップ→イベント→チケット交換→育成イベント

おすすめ度:★★★☆☆

まのめぐです。お前を萌え殺します。(1/4)

【幾星霜の先に】風野 灯織

区分:s-SR

入手手段:ショップ→イベント→チケット交換→育成イベント

おすすめ度:★★★☆☆

まのひおです。お前を萌え殺します。(2/4)

【スローリー・メモリー】八宮 めぐる

区分:s-SR

入手手段:ショップ→イベント→チケット交換→育成イベント

おすすめ度:★★★☆☆

めぐひおです。お前を萌え殺します。(3/4)

【オールウェイズ】八宮 めぐる

区分:s-SSR 八宮めぐる(限定)

おすすめ度:★★★☆☆

筆者は……イルミネーションスターズさんのことが本当に好きで……。イルミネさんと言えども流石に常に三人一緒ではなく、お仕事の都合で二人だけになることもあります。
そういう時にする話が「あと一人」の話なのが本当に嬉しくて……。

ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシスImage

区分:イベコミュ

おすすめ度:★★★★★

筆者が一番好きなイベコミュです。本記事の半分は、このコミュを読んでほしいがためにあります。永遠がないことを理解した上で、イルミネがなぜイルミネでいられているのかを教えてくれるコミュだと思っています。

私たちが物語の登場人物を見るとき、大小さまざまにせよ「あくまでフィクションの登場人物だから、こういうことは知らないだろう」という視点――言わばお約束があります。それは登場人物が根っこから善性のみで出来ていることだったり、あらゆる悪意を知らなかったりすることだったり、永遠を疑いなく信じていることだったりします。それは別に批判されるべきことではないですし、煌々と光るそれに救われる人もいるでしょう。

ただ、本コミュで語られるのは「そうではない」ということです。

確かにイルミネのお三方は根っこからの善人ですし、そして三人はいつも一緒にいます。しかしそれが「フィクション的なお約束」ではなく、「彼女たちの願い・選択・祈り」の結果であることを教えてくれるコミュです。


読み終わった後には『STARRY PLACE』を聴くのがオススメです。

【だいすきだよ】櫻木 真乃

区分:s-SSR (トワイライツコレクション)

おすすめ度:★★★★☆

ナチュラルにカップリングで殴ってくるカードはこちら!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!「イラストはこんなんだけど、どうせブライダルのお仕事の話で終わりでしょ?」←飛ぶぞ
一緒に『KoiKyun!』も聴くと本当に楽しくなれると思います。

ありがとうございます。

【花かんむりをあなたへ】八宮 めぐる

区分:s-SR

入手手段:コラボフェス(そのうちチケ交換に出てくると思います)

おすすめ度:★★★☆☆

まのめぐです。お前を萌え殺します(4/4)


樋口円香さん→浅倉透さん

「知ってる
わかってる

私だけは
浅倉透を」

ノクチルは市川雛菜さん、福丸小糸さん、樋口円香さん、浅倉透さんの四人からなる、高校生&幼馴染ユニットです。本記事が着目するのは高学年組であるお二人――というか、樋口円香さんから浅倉透さんに向けられる感情です。なんと二人は家も隣。

さて、百合のオタクは少なからず感情のオタクでもあると信じているのですが、特にそういう人間をボコボコに殴り倒す矢印がこれだと思います。
基本的には円香さんのコミュの紹介になると思いますが、透さんも併せて読んでいると楽しい――場合によっては苦しい――と思います。

両想いのカップリング♡というよりかは、「同性の幼馴染に感情を無茶苦茶にされ続けている人間」の話という感があります。肌を焼くような執着独占憧憬窒息と、激情がそこにあります。
かなり百合のオタク向けに言えば、武田綾乃作品が好きな人は好きそうという偏見を持っています。(『立華高校マーチングバンドへようこそ』はいい作品ですよ)


さて、時系列がある程度あるので、イルミネさんとは違って順番に読むことをそこそこオススメしています。おれの考えたデッキはこれや――――

【283プロのヒナ】浅倉 透
(透さんWING)
円香さんWING
天塵
【ギンコ・ビローバ】樋口 円香
円香さんファン感謝祭
【UNTITLED】樋口 円香
(透さんGRAD)
円香さんGRAD
【ピトス・エルピス】樋口円香
円香さんLanding Point
【オイサラバエル】樋口 円香
天檻
【ハシルウマ】樋口 円香
【ダ・カラ】樋口 円香
【漠漠】樋口 円香
円香さんSTEP
【フリークス・アリー】樋口 円香
【fuka】樋口 円香
【ジャンク・ション】樋口 円香
【ナカキヨノ】樋口 円香
コースティクス・ノクチルカ
【アマテラス】樋口 円香
【露色】樋口 円香

【283プロのヒナ】浅倉 透

区分:s-R

おすすめ度:★★★★☆

「いいじゃん
樋口がわかってれば」

最初期のカードですが、浅倉透さん→樋口円香さんが、端的かつ強力に語られています。コミュ自体は一瞬で読めるので、ひとまず頭の片隅にでも置いておくと嬉しいかもしれません。

円香さんWING

区分:共通コミュ

おすすめ度:★★★☆☆

最初のメインコミュであり、樋口円香さんの紹介でもあります。
(時に記号的に語られがちな)円香さんのシニカルさについて奥行きが出るので、筆者はオススメしています。透さんWINGも合わせて読むと……いいと……思います……。

天塵Image

区分:イベコミュ

おすすめ度:★★★★☆

「透にできることで、私にできないことはない」

アイドルとしてのノクチルに舞い込んできた初仕事。しかしどうも、雲行きが怪しいようで――。

ノクチルさんの最初のイベコミュ。ユニット紹介でもあります。
彼女たちは幼馴染という閉じた関係性を持ったまま、アイドルという海に漕ぎだします。それまでは内部だけで完結していた関係性が外の世界に晒されたとき、彼女たちはどう立ち回るのでしょうか。


四人のノクチル内での立ち位置を示しながら、それぞれの大切にしているものが分かるコミュだと思います。円香さんにとってのノクチル、みたいなものが見えて嬉しいコミュです。

【ギンコ・ビローバ】樋口 円香

区分:p-SSR(限定ですが、4/22に配布されます)

おすすめ度:★★★☆☆

「……あの映画は、できればひとりで観たいものでした
感想を言葉にしなくていい時、しばらくの間、誰とも話さなくていい時に」

円香さんのコミュにおいては「美しさ」について継続的に語られます。このカード自体は主としてシャニPと円香さんの話なのですが、本コミュではその「美しさ」について初めて触れられます。

円香さんが持つ優しさや、言葉への真摯さが見れるコミュです。

「ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいいのに」

円香さんファン感謝祭

区分:共通コミュ

おすすめ度:★★★☆☆

「一方的に照らされて
一方的に視線を受ける……
ここは本当にアンフェアな場所」

どちらかと言えばこれはノクチルさんのコミュなのですが、円香さんがステージや自身の歌をどう見ているのかが語られます。

【UNTITLED】樋口 円香

区分:s-SSR(恒常)

おすすめ度:★★★★☆

「知ってる
わかってる
私だけは
浅倉透を」

誰しもが浅倉透さんのカリスマ性に目を奪われる中、樋口円香さんは「自分だけは浅倉透を特別視しない、『見ていない』」ことを語ります。「私以外は」「以外」の中に、同じく幼馴染であるはずの小糸さんと雛菜さんまでもが含まれているのがどうしようもなく怖いところです。


「見ない」という円香さんの主張を知った上で、今一度カードイラストを見てほしいです。

「見てた?」
「見てない」

円香さんGRAD

区分:共通コミュ

おすすめ度:★★★☆☆

【ギンコ・ビローバ】でも語られた樋口円香さんの真摯さを、さらに深く掘り下げるコミュだと思っています。

一応百合サークルの記事ということで百合の話をしないといけないとは思っているのですが、円香さん→透さんの話をするなら樋口円香さん自身の話が必要だとも信じているので、こういうコミュも勧めています。素直にいいコミュです。

【ピトス・エルピス】樋口 円香

区分:p-SSR(限定)

おすすめ度:★★★★★

これも一つの「美しさ」の話だと思います。曖昧で何を指しているのかが掴みづらい「美しさ」ですが、円香さんは確かな正解を持っているように見える、とシャニPは観察します。
ちなみに、樋口円香さんのメンバーカラーはです。
ギミックが特殊なので、画面をしっかり見ながら読むことをオススメします。

「樋口円香には激情がある」

円香さんLanding Point

区分:共通コミュ

おすすめ度:★★★☆☆

「色は混ざると濁るけどね
光は混ざると――」照明スタッフ

樋口円香さんのキーワードと言えば「歌」「美しいもの」「激情」ですが、本コミュはファン感謝祭や、【ピトス・エルピス】から続く、樋口円香さんと歌の話です。メインコミュなので基本的にはPとの話ですが、樋口円香さんの激情の一端が見れるので好きなコミュです。円香さんの激情の根源に徐々に近づいていきます。

【オイサラバエル】樋口 円香

区分:p-SSR(恒常)

おすすめ度:★★★★☆

「枯れたものは枯れたもの
それを美しいとは私は言えない」

オイサラバエル――老いさらばえる。廃墟でのロケから、時間と、それに伴う盛衰について語られます。ドライフラワーという、最も鮮やかな瞬間を切り取って吊るすものから、「美しいもの」について展開する話です。

円香さんが今までドライフラワー作り――美しいものを美しいままに留めること――に失敗していたことを含めて面白いコミュだと思います。

余談ですが、「美しさ」のように、コミュの積み重ねで一つの感情をゆっくりと磨き上げていく様がかなり好きです。徐々にピントが合っていき、バチリと像が顕現した瞬間は何物にも代えがたい脳汁です。


ところで、スターチスはドライフラワーでは定番の花だそうです。

天檻Image

区分:イベコミュ

おすすめ度:★★★★★

「歌
私の聴きたい歌」浅倉透

ノクチルのイベコミュです。天塵では食われる側だったノクチルが、食う側に移りつつあることが語られます。

樋口円香さんから見た浅倉透さんについては、よく語られる印象があります。(これは円香さんが内心での言語化に積極的なのも一因でしょうが)
では「浅倉透さんから見た樋口円香さん」は? 本コミュはその一端が見れるものです。透さんのGRADを先に読んであるといいかもしれません。

「息してる」がどれほどの賛辞であることでしょう!

併せて読みたい:【fuka】樋口 円香

【ハシルウマ】樋口 円香

区分:s-SSR(恒常)

おすすめ度:★★★★☆

「――――影絵が走る
もう隣合わせではないと知らずに」

「夢」という要素から、樋口円香さんの浅倉透さんに対する感情をほどいていくコミュ……のように思います。

円香さんはアイドルとして走り出しましたが、本当に透さんと併走できているのでしょうか。次に紹介する【ダ・カラ】に通じる気がします。
勧めておいてアレですが、筆者は初見のとき「❓」になったので分からなかったら後で読み返すのがオススメです。

「全部、夢
全部全部、くだらない夢」

【ダ・カラ】樋口 円香

区分:s-SR

入手手段:ショップ→イベント→チケット交換→育成イベント

おすすめ度:★5兆

「見える世界に
美しいものはなかった」

「全て」です。先に述べたキーワードである「歌」「美しいもの」「激情」その全てがただ一点に収束します。

【漠漠】樋口 円香

区分:s-SSR(限定)

おすすめ度:★★★☆☆

樋口円香さんは、どうしてノクチルにいるのでしょうか?

円香さんSTEP

区分:共通コミュ

おすすめ度:★★★★★

「ねえ、どこで買った?
このチョコ」

STEP編では共通して、各アイドルの「アイドルになる前」の話が描かれます。
円香さんの自室がドライフラワーで埋め尽くされていること含めて、有数に強烈なコミュでしょう。端的に言ってしまえば、樋口円香さんに付き纏い続ける「浅倉透」という呪いの話でしょうか。

円香さんはPに対して特別シニカルな行動をとりますが、その根源的な理由が見られるコミュでもあります。
【ダ・カラ】と併せてどうぞ。

【フリークス・アリー】樋口 円香

区分:p-SSR(恒常)
おすすめ度:★★★★☆

「……ダイヤの原石は綺麗ですよ
八面体の個性的な結晶は美しい
カットするのが惜しまれるほど」プロデューサー

これも「美しさ」についてのコミュです。「吸血鬼屋敷のメイド長」という役を通して、円香さんが隠し続けていた激情が引きずり出されていく話でもあるように思います。

映画監督が「円香さんが美しさを知っていること」に気づいていることも特徴的です。
スカウト時に円香さんは「ダイヤの原石」と評されましたが、カットはどこまで必要でしょうか。憧憬は叶いうるものなのでしょうか。

【ピトス・エルピス】や、STEPで語られた「窒息」から繋がる話でもあります。

「よかった、やっぱり持っているみたいだね
君にとっての美しいものを」監督

【fuka】樋口 円香

区分:s-SR

入手手段:ショップ→イベント→チケット交換→育成イベント

おすすめ度:★★★★★

「浅倉をこれ以上
わかろうとするな」

透さんと円香さんが上下で分断されたような構図が特徴的なカードです。
円香さんと透さんの非常に近い距離感を改めて感じられるコミュではありますが、同時に強烈な相互不理解も感じさせるコミュに思えます。
百合のオタクは相互不理解が好き。おれも。

(おそらく)透さんが円香さんの寝顔を見ていたり、【UNTITLED】への意識がありそうです。

「できるかな
私も
樋口になるの
段々」

併せて読みたい:天檻、【UNTITLED】、【283プロのヒナ】浅倉 透

【ジャンク・ション】樋口 円香

区分:p-SSR(パラレルコレクション)

おすすめ度:★★★☆☆

パラレルコレクション――――アイドルのIFの未来を描くカードです。ある方は大成していたり、ある方はそもそもアイドルを辞めていたり。樋口円香さんは後者です。窒息しそうな場所から逃げ出したとして、その先で気持ちよく息が吸えるとは限りません。亡霊は付き纏います。

”パラレル”ではありますが、息苦しさという意味で【フリークス・アリー】や【ナカキヨノ】に通じる話だと思います。

 

【ナカキヨノ】樋口 円香

区分:s-SSR(トワイライツコレクション)

おすすめ度:★★★☆☆

「浅倉だけが先を行くように見えるのは
許せない」

本記事はとおまどの話として始まったはずなのに、樋口円香さんその人の話になっているのはそろそろお気づきでしょう。連綿と続く樋口円香さんの「激情」の話に、【漠漠】やSTEPで語られた窒息感が加わって読み味としては結構ハードです。『コースティクス・ノクチルカ』と併せてどうぞ。

余談ですが、STEPと本コミュで円香さんの自室を比較すると面白いと思います。

コースティクス・ノクチルカImage

区分:イベコミュ

おすすめ度:★★★★★

「違くて、ずっと
音」

「あ

その音」浅倉透

ノクチルさんのイベコミュではありますが、円香さん個人のコミュでもあるように思えます。

これ以前のコミュで語られた、円香さんの息苦しさについて掘り下げるコミュです。円香さんがアイドルを続ける意義とは何でしょうか? 本コミュでは明確に回収こそされませんが、透さんが円香さんの歌に言及するのも興味深いところです。(もしかしたら今後とお→まどの話をしっかりやる可能性もあるかもしれません。やってください 頼む)

ノクチルのイベコミュだと筆者はこれが一番好きです。

【アマテラス】樋口 円香

区分:p-UR(恒常)

おすすめ度:★★★★☆

きっと呪いは解けたわけでなくて、むしろ今までよりも強く呪いを自覚させられるのだと思います。しかし、選択をしたということが肝要に思えます。

【露色】樋口 円香

区分:s-SR(コラボフェス報酬

おすすめ度:★★★★☆

樋口円香さんの最新(2026/05/01現在)カードです。基本的には雛菜さんとの𝒄𝒖𝒕𝒆なコミュなのですが、円香さん自身の「色」への模索が、以降に向けた布石であると感じます。今後また色の話をするコミュが出るのでしょうか。

ところで、雛菜さんにはどこまで見えているんでしょうか……。


余談:P(プロデューサー)について

ここからはちょっとだけ「プロデューサー」についてお話しようと思います。
プロデューサーの話をすると、百合のオタクにはやや渋い顔をされます。これは正直、仕方ない話だとは思います。
シャニマスのジャンルはやはり「アイドル育成シミュレーション」ですし、「百合って言うけどアイドルはP、つまり自分に好意向けてくるんでしょ? 俺は存在したくないんだよな……」と思うのは無理はないことです。というか筆者がそうだったのでよく分かります。
実際Pラブ要素(アイドル→Pの好意相当のもの)はアイドルによってはありますし、これを否定してしまうと人格そのものを否定してしまいそうになる方もいます。

しかし、です。シャニマスにおいてP≠自分という立場を取るのは、割と容易に思われます。というのも、シャニマスはPに固有の人格を感じさせる部分がかなり多いです。
というかPがめちゃくちゃ喋る。マジでびっくりするぐらい喋る。
それゆえに、「俺」に喋っているというより、画面内にいる「プロデューサー」なる人物に話しかけている印象が強いです。

もしあなたが学マスのプレイヤーなら、親愛度コミュのあの形を想像してもらえれば分かりやすいと思います。(余談ですが、学マスは顔ありPの二次創作が体感多いような気がしています。広Pとかをよく見かけますね)
なので、男性キャラの存在自体は別に許せる、という方は案外普通に読めるのではないかと思います。

ただこんな風に言われても正直信じきれないと思うので、Pの人格を信じたい方には「YOUR/MY Love letter」(アルストロメリアのイベコミュ)をぜひ読んでほしいです。Y/MLlはある種「シャニPのコミュ」でもあります。

おわりに

ここまで百合オタク向けにコミュを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。順番こそ示したものの、別にどこから読んでも大丈夫だと思います。気になったら後から遡ればいいのです。

記事内では紹介しきれませんでしたが、以下のコミュもおすすめですので気になったらどうぞ。

・【別冊をとめ】杜野凛世

・【Summer for Us】大崎甜花

・【Fallin’ Snow in】 大崎甜花

・【Pomme pour toi】大崎甜花

・『流れ星が消えるまでのジャーニー』(イベコミュ・アルストロメリア)

・『好きの満ち欠け』(イベコミュ・アルストロメリア)

・SHHis、斑鳩ルカさん周りのコミュすべて(『セヴン#ス』(SHHisイベコミュ)までをどうか…)

今回は百合にフォーカスするという意図だったので立ち入りませんでしたが、シャニマス自体に興味があるのであれば、サンデーうぇぶりで連載されている『アイドルマスターシャイニーカラーズ 事務的光空記録』が非常におすすめです。(アプリなら全話初回無料です)

全アイドル――ひいてはコンテンツそのもの――の雰囲気が掴めると思います。


また、さらに網羅的に読みたいという方がいれば、実装順にまとめられた有志のスプシがあるのでそちらを見るのもいいかもしれません。

それでは!

【新歓布教blog第5回】花とゆめから『そのうるわしきひとは、』をご紹介!

かいたひと:MASA

 

はじめに

 いっけな~い、遅刻遅刻~! ブログを書こう書こうと思っていたのですが、重い腰がなかなか上がらず気づけば紅萠祭も入学式も終わり授業期間が始まってしまいました。あまりにも怠惰すぎる……。

 さて新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。履修登録はちゃんと済ませられましたか? 私は1年前、抽選科目の存在を知らず履修登録に敗北しました。他にも大事なことが色々載っているので、面倒ですがKULASISはしっかりと確認しましょう。

 新生活が始まったばかりで色々と大変かと思いますが、その合間にでもこの記事を読んでいただければ幸いです。

 

 さて、2026年になってから突如として百合作品を大量に出し始めた漫画サイトがあるのを、皆さんはご存じでしょうか。それは「花とゆめWEB」というサイトです。花とゆめといえば、白泉社から刊行されている少女漫画雑誌・レーベルですね。花とゆめでは『ガラスの仮面』や『暁のヨナ』などが掲載されており、読んだことはなくても知っているという方は結構おられると思います。花とゆめWEBで2026年に出た新作百合は連載・読み切り合わせて、その数は少なくとも4つはあります。Twitterを見る限り、昨年までは花とゆめWEBが百合を猛プッシュしている印象はなかったのですが、今年の白泉社は一体どうしてしまったのでしょう。もしかすると今年の「花とゆめ」の「花」は百合の花のことなのかもしれません……。

manga-park.com

 

花とゆめWEBの新作ツイート画像。なんと7分の4が百合作品である。

 

 そんなわけで、今、百合的にアツいレーベルである花とゆめから『そのうるわしきひとは、』という作品を紹介させてください。本作は、今年の2月から花とゆめWEBで『運命は役に立たない』という百合漫画を連載中のまめ魚先生の前作です。発売当時、帯に「ささ恋」の竹嶋えく先生による推薦文が書かれているというのを知って買いに行きました。それまでは少女漫画を読んだことがなかったので、「少女漫画にも百合作品があるんだ!」と思った記憶があります。しかしながら、その後少女漫画の百合作品を探しに行くといったことは特になく、花とゆめに他にも百合作品があることを知ったのはまめ魚先生が今年新たな連載を始めたのがきっかけなのでつい最近です。とはいえ、『そのうるわしきひとは、』がなければ私は今ごろ花とゆめの百合に気づくことがなかったでしょうから、そのきっかけを与えてくれた作品として皆さんにご紹介したく思います。

『そのうるわしきひとは、』の表紙

 

あらすじ

 それでは、『そのうるわしきひとは、』のあらすじ紹介に移りましょう。

 名門女子校の生徒会長を務める、才色兼備で完璧な美(ふみ)がある日失踪してしまい、学校中はその噂で持ちきりに。完璧に振る舞う美の素顔を知る、一番の仲良しである後輩の琴は真相究明に乗り出します。「美が人を殺したから姿を消した」という突拍子もない噂も校内に流れるなか、琴は生徒会室の美の机から「忌まわしくてたまらなかった存在を、殺めに行く」と書かれた、噂を裏付けるような日記を見つけてしまいます。そこへ、美は何事もなかったかのように帰ってきたのですが琴への様子が異なっており——。

 女子校を舞台に描かれる、美と琴の二人の百合物語です。

 

オススメポイント

 絵が非常に綺麗です。上に表紙画像を載せてあるのでご覧いただきたいのですが、女子校という世界にとても似合った絵柄で、優美さや繊細さが表れていますよね。この絵柄で、美が見せる影のある表情や、終盤の二人の表情を見たときには百合オタクも悶えること必至です。各所にオタクぶっ殺し表情が存在しているため、読み返していて軽く3回は死にました。皆さんも百合を抱いて溺死しましょう。

 

 そして、この漫画の魅力的なところとしてふきだしも挙げられます。いつも完璧に振る舞う美のふきだしは普段はきれいな形をしていますが、しばしばふきだしの線ががたついています。美が不安感やどうしようもない感情を抱いたとき、あるいは本心を取り繕うときにふきだしの形が不安定なものとなっているのです。完璧に振る舞う美も様々な感情を持った——あるいは、不安定さや不完全さを持った——一人の人間であるということが殊更に伝わってきます。美の不安定なふきだしの形は美の失踪前後では痛ましい印象を受けますが、終盤では痛ましさが消え去って微笑ましいものとなります。特に終盤の美は表情も合わせてとんでもない破壊力を持っているので必見ですよ!

『そのうるわしきひとは、』p.62より。美のふきだしに本心を取り繕った痛ましさがにじむ。



 

美の人間らしさ

 締めとして、美に注目してみたいと思います。以下、ネタバレを含みますのでご承知ください。

 

 

 

 美は家が病院で許嫁もいるという上流階級の出身ですが、普通のお家柄である琴のことが好きになってしまったわけです。美は好きでもない許嫁との結婚を望んでおらず、好きな人と付き合いたいと考えていました。しかし、だからといって琴に想いを伝えるわけではなく、琴と両想いになれるかもしれないという微かな期待から琴に好きなタイプを聞くという迂遠な手段を取っています。この質問への琴の返答が「完璧でない普通な人」であったために、美の恋心は琴への迷惑になると考え、自分の恋心を殺そうとしていたというのが失踪の真相でした。

『そのうるわしきひとは、』p.90より。

 ただし、仮にここで琴の好きなタイプが美に合致するものであったとして、美は琴に想いを伝えたのかには疑問が残ります。親に従順で、そして完璧であることに縛られていた美は、美と琴が両想いになれると分かったとしても自分の気持ちを言い出すことはなかったのではないでしょうか。琴への想いが綴られた美の日記が見つかって、そして琴によって美は「普通の女の子」なのだと言われなければ、美は親に従う完璧な娘として許嫁との婚約を受け入れていたのではないかと考えられます。

 だとすると、美は琴とは付き合うことはできないと知りながら好きなタイプを聞いていたわけです。このように、美は合理性だけに基づいた行動を取っているわけではなく不合理な行動も取っているというところに人間味があり、やはり美も普通の女の子であるのだということが実感されます。

 恋をして、その想いを伝えられず、その気持ちに嘘をつこうとして、でもダメで……。美はそんな普通の少女であり、そして私たちはそういった「普通」に数々の作品を通じて悶えてきたわけです。私たちが理解できないような、人間らしくない悩みが呈されたとしても私たちは共感を覚えることはできないはず。一見完璧に見える人がじつは持っている普通さや私たちにも通ずる普遍的な悩み、そういったものに私たちはどうしようもなく惹かれてしまうわけですね。

 完璧であろうとする不器用な先輩が普通の恋する少女となる様にぜひ注目して読んでみてほしいです。

 

おわりに

 まとまりのない文章でしたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。

 『そのうるわしきひとは、』は1巻完結で読みやすいのですが、内容を紹介しようとすればどうしてもネタバレになってしまうのが難しいところですね。まめ魚先生の新作『運命は役に立たない』も連載中ですので是非とも読んでみてください。

manga-park.com

 ここで紹介した『そのうるわしきひとは、』の他にも花とゆめには百合が転がっています。私も把握しきれているわけではないので、他にもご存じの方がいれば教えてください。

 それでは、新入生の皆さんは新生活に花とゆめを添えて、立派に花咲き、夢を追いかけてくださいね!

【新歓布教blog第4回】『保健室はふたりきり』2巻が百合入門に最適な3つの理由

かいたひと:りんどう

 

はじめに

 ごきげんよう。新入生の皆様はご入学おめでとうございます。履修は計画的に。俺みたいになるな。

ギリギリ留年回避の図

 学業はさておき、弊会も新歓例会が始まり、ありがたいことに予想より多くの入会希望者にお越しいただいております。

 百合文研の新歓は百合初心者から熟練のオタクまで大歓迎ですが、そうなるとやはり気になるのは「百合初心者に勧める作品」。百合オタク永遠の問いともいえるこの話題ですが、私が提出したいのがこの回答。

 ろここ先生作『保健室はふたりきり』の、2巻です。

 本作は、とある女子高の保健室で繰り広げられる、ささやかなれど濃密な関係性を描いたオムニバス作品。私が勝手に提唱・愛好している「保健室百合」ジャンルの一作でもあります(他では「きみ死ぬ」など)。

 なぜこの作品がオススメなのか、そしてなぜ2巻なのか。解説していきます。

 

理由①:百合一直線のストーリー

 本作はオムニバス形式であり、それぞれのカップリングに焦点を当てた30~40ページのストーリーが1冊につき4組収録されています。

 ワケがあったりなかったりで、カーテンで仕切られた保健室に二人きりになる百合カップルたち。学校という集団のなかに生まれた閉鎖空間に逃げ込んだ彼女らの、ちょっとした非日常のイチャイチャが王道に描かれるのが最大の魅力です。一章の長さがコンパクトな分、二人の掛け合いが絶え間なく続くので、百合の一番おいしい部分を序盤から楽しむことができます。

 

理由②:四者四様の関係性

 2巻に収録されているのは、病弱お嬢様×保健室登校、ツンデレ幼馴染、ドジっ子独占欲、先生同士カップルの4組。気持ちを素直な言葉にして伝える子、モノローグでクソデカ感情が明かされる子、二人きりになるためわざわざ保健室に通う子…と描写が豊富で、そのどれもが百合だと確信して楽しめる安心(?)設計となっております。

『保健室はふたりきり』2巻より、かのんと鈴音の出会い

 私のお気に入りは桃音×杏の章。杏にいつも世話を焼かれているドジっ子の桃音は、ヤンデレ風味な感情を杏に抱えており、その行き場に迷っている不器用な子だけれど、実は…というお話です。

 

理由③:なぜ1巻ではなく、2巻なのか

 オムニバス形式のこの作品、連載当時はカプA①→カプB①→カプC①→カプD①→カプA②→…という順で掲載されていたのですが、1巻はこの連載順のまま収録されていました。対して2巻では、カプE①~④→カプF①~④→…という順に改良されており、各カップルのストーリーが読みやすくなっています。

 目次から飛べばいいと言えばそれまでなのですが、布教においてはストレスフリーであることも大事な要素。1巻と2巻では収録ストーリーも独立しており読む順番を問わないので、初心者には2巻から読ませたいと考える所存です。

 

おわりに

 ろここ先生の商業デビュー作である『保健室はふたりきり』、いかがでしょうか。先生の繊細な絵はさらに進化して、『君になれたら』『メイドに力負けするなんて恥ずかしくないんですか?』で現在も活躍中です。そちらもよしなに。

 ではみなさま、本年度もよき百合を!

【新歓布教blog第3回】『立花館 To Lie あんぐる』と『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』くらべてわかるそれぞれの魅力

かいたひと:O. obscura

 

百合界隈に幽霊が出る―百合ハーレムという幽霊である。

 

はじめに

2025年、みかみてれん先生による『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』(通称「わたなれ」)がアニメ化され、映画続編も大ヒット上映となったことは記憶に新しいでしょう。受験生でありながら視聴していた新入生も少なくないと思います。この作品は主人公・甘織れな子と複数のヒロインとの関係性を描いたものであることから、しばしば「百合ハーレム」作品として紹介されます。中でも甘織れな子は、なぜかどのヒロインとも必ず一緒に入浴するという不思議な特性を持っています。

TVアニメ『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』(https://www.watanare-anime.com/

 

一方、2010年代の百合姫には「ラッキースケベでハーレム漫画の主人公が女の子だった!?」と帯で銘打たれた作品があったことをご存じでしょうか。merryhachi先生による『立花館 To Lie あんぐる』です。本作はその刺激的な画と、どう転ぶかわからない三角関係にドキドキした読者の方も多かったことでしょう。2018年にはアニメ化されており、より多くの人を百合に引き込むことにも貢献したに違いありません。もっとも、30分アニメにしてくれたら尚良かったのですが……。

TVアニメ『立花館 To Lie あんぐる』(https://tachibanakan-anime.com/

さて、上記の2作品は「百合ハーレム」作品として知られています。しかし、果たして本当にそうなのでしょうか。2つの作品を主人公とヒロインとの関係性の観点から比較しつつ、魅力を紹介することで、この2作品が実は「百合ハーレム」ではないのではないか?という論を提示していきたいと思います。ただし、新入生向けの布教ブログである特性上、極力ネタバレに配慮してあいまいな表現を用いる場合がございますので予めご了承ください。

 

「立花館」の正体は……三角関係百合!?

「立花館」のお話は、主人公・夏乃はなびが間違って学生寮「立花館」に引っ越してきたことから物語が始まります。そこで、年下幼馴染・藤原このみとの再会と、不思議系ヒロイン・篁いおりとの信じられない出会いを果たします。他にも、管理人でこのみの姉である藤原依子、寮に居座る社会人の月城優、高飛車な女子大生の三井そのあなど、個性的なメンバーが寮に住んでいます。特に序盤は全ての寮メンバーとのラッキースケベ展開が用意されていますが、次第に主題がはなび・このみ・いおりの三角関係(と、大人三人組の関係性)の描写にシフトしていきます。

 

『立花館 To Lie あんぐる』1巻より、このみ(左)といおり(右)。実は冒頭から主題は提示されていた!?

ヒロインのうち片方に該当するこのみはツンデレ系のキャラクターですが、思いのほか序盤に主人公に対して好意と激しいアタックをぶつけてきます。もう一方のヒロインの篁いおりは無表情で不思議ちゃんなキャラクターですが、こちらは激しいアタックとは裏腹に、段々と主人公・はなびへの感情を自覚し整理していく過程の描写は読みごたえがあります。ぜひご自身で確かめてみて下さい!!

『立花館 To Lie あんぐる』3巻より。篁いおりはイカの方が好き

立花館の三角関係は、テーゼとアンチテーゼにあたるような二人のヒロインが、関係性と恋愛哲学をそれぞれ深めながら、主人公が最終的な結論(ジンテーゼ?)を見つけ出すという構図にあります。いわば「弁証法的な百合」と称することができる……のかもしれません。漫画単行本の帯には終盤まで「ラッキースケベでハーレム漫画の主人公が女の子だった!?」と描かれていますが、実態としては寮のメンバー全員をはなびのモノにするハーレムものでは決してありません。また、どちらかを選択する、というのは優柔不断な主人公・はなびにとっては重い決断であり、決断それ自体がヒロインと向き合い成長した結果とも取れるのが「立花館」の良いところだと思います。作品を通して夏乃はなびは優しいが流されやすいキャラクターであり、ヒロイン2人をはじめとする寮での人間関係を深めていくことで、はなびが成長する成長譚としても読んでほしい作品になります。さらにはなびとヒロインの関係性には衝撃のラストが明かされておりますのでぜひお見逃しなく!

『立花館 To Lie あんぐる』9巻特装版の付録冊子より。

京都大学百合文化研究会会誌『Liliology vol. 7』では原作者のmerryhachi先生にインタビューをさせて頂きました!!立花館を書こうと思ったきっかけは?高校の寮なのに半分が大人なのは何故なのか?特装版のPCゲームや公式同人誌制作などの付録を思い立ったきっかけは?……などなど、長時間にわたり「立花館」の裏話を含めmerryhachi先生に密着しました。もしよろしければ『Liliology vol. 7』を入手のうえ、ぜひインタビュー記事をご笑覧下さいませ。

 

「わたなれ」の正体は……???

では、ヒロイン全員と入浴する甘織れな子が主人公の「わたなれ」はどうでしょうか。問題のシーンも含め、確かに「百合ハーレム」的な描写は「立花館」と同様に多く見られると思います。また、「立花館」のはなびは真剣に悩んだ末に決断をする一方、「わたなれ」のれな子の両方とも選択する様は、真剣に悩んだ末に「ゴミ」になてしまったと言われても仕方のない部分はあります。しかし、一対多というハーレムの構造にれな子、紫陽花、真唯の関係性は落とし込めるものでもありません。れな子を中心としたハーレムではなく、3人で交際関係にあることを強調しておきたいのです。何のことやらとお思いのアニメ視聴勢は、ぜひ原作ライトノベル最新8巻の餃子づくりのシーンをお読みください!!!

 

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』1話より

つまり、甘織れな子の告白シーンでは、恋愛は男女で付き合うものという異性愛規範だけでなく、一人の人間としか付き合うことができないのだというモノガミーも克服し、2人と新たな関係性を構築したとも取れると思います。「わたなれ」のれな子が恋愛規範に対して真剣に向き合う努力をしたうえで規範が崩壊していく、「脱構築的な百合」と称することができる……のかもしれません。確かにれな子は両手に花状態ではあります。「れな子が悪い」のですが、決してヒロインを自分のモノ扱いするキャラクターではありませんし、あくまで一人の対等な人として他者と向き合うことを貫く誠意のあるキャラクターです。告白後の展開、特に餃子づくりのシーンに象徴される関係性のように、ハーレムよりもむしろポリアモリー作品と呼ぶ方が実態に近いのかもしれません。ただし、れな子と周囲の関係性はまだまだ「進化」の途上にあります。今後も、れな子を取り巻くキャラクターたちとれな子の関係性の変化、繰り広げられる「れな悪」展開に要注目です。

 

おわりに

ここでは「百合ハーレム」モノとされている2作品は、主人公とヒロインたちとの関係性の観点から決してそう読めるとは限らないことを提示してきました。また、類似した2作品の比較は、両者の違いを際立たせることでいっそう作品の魅力に気づかせてくれたものと思います。

京都大学百合文化研究会では、作品の感想を言い合ったり、作品について批評・議論したりする仲間たちがあなたを待っています。新入生の皆様もぜひ、入会して好きな作品の感想や批評を先輩にぶつけてみましょう!例会での当記事への批判も大歓迎です!

それでは皆様、ごきげんよう!

 

 

追記:みかみてれん先生と対談がしたいです!!!!(言うだけタダ)

【新歓布教blog第2回】大学生が読むべき百合マンガ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』

かいたひと:床

(前略)哲学が数学と姉妹関係を結ぼうと念じていることは十分な理由をもちはするが、しかし哲学は数学の組合に属するものではない、ということである。哲学と数学とを結びつけようとすることは、所詮僭越な企てであって、とうてい成功の見込みはない、むしろ哲学の意図を挫折せざるを得なくするだけである。(カント(篠田英雄訳)『純粋理性批判(下)』岩波文庫, 2022, p35-36)

新入生の皆様、ご入学心よりお祝い申し上げます。この記事を書かせて頂きました、信州は上伊那出身の床という者です。

さて、この春から大学生になった皆様の中には、哲学書を読みたいと思っている方も少なくないでしょう。哲学書を読むことは、ご自身の人生を鑑みることだけでなく、冒頭に取り上げたような百合的な文章に出会うことにも繋がります。

憧れのあの人と姉妹という特別な関係になりたい、だけど私があの人の妹になるだなんて、そんなおこがましいことはできない。

冒頭の文を読んで、そのような女学生の儚い恋模様が皆様の脳内に浮かんでいることと思われます。

ですが、そんな哲学書にも欠点はあります。それは何と言っても読むのが大変であるということです。哲学書は内容が難解であり、かつ文量が多いものが大半です。そうなると必然的に時間をかけて読むしかなくなります。

貴重な大学生活。友達とワイワイ遊びたいし、小説や漫画も読みたいし、ゲームもしたいし、旅行もしてみたい。それに加えて、三年になったら就活や院試の準備もしないといけない。そうすると哲学書を読んでる暇なんてない。哲学と百合を同時に味わえて、それでいて読みやすい本はないものか。

そんな方々にお勧めしたい作品が、『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』(以下「上伊那ぼたん」)です。

「上伊那ぼたん」第1巻表紙

二十歳の大学生・上伊那ぼたんは酔うと少し大胆になって一緒に飲んでいる先輩たちにドキッとする一言を…?(「上伊那ぼたん」第1巻裏表紙より)

2026年4月よりアニメが放送される話題作でもあります。

この作品は登場人物がお酒を飲みながら、徐々に関係性を構築していくという、しっとりとしていて、それでいて刺激もあるといった酒の肴になるような内容になっていて、読者がほろ酔い気分の雰囲気の中で醸し出される百合を味わうことができるようになっています。

それにわたくし事ではございますが、上伊那出身者として舞台ではないとはいえ地元の名を冠した作品が存在するというのは嬉しい限りです。

ここまで読んで、百合要素があるのは理解したが、哲学の要素が見当たらないではないかとお思いの皆様、ご安心ください。主人公の上伊那ぼたんは、気分転換や息抜きに哲学書を読む化け物です。

『論理哲学論考』はともかく、『精神現象学』は大きさ的にも内容的にも気分転換に読むような本ではない(第4巻, P70)

また、第7巻において各登場人物が選ぶ大切な10冊というものが紹介されており、その中には、スピノザの『エチカ』、ハイデガーの『存在と時間』、そして『純粋理性批判』などの有名な哲学書が名を連ねているので、漠然と哲学書を読みたいと思ってはいるが、読みたい本が具体的に決まっていない人にもお勧めです。

終わりに

最後になりますが、「上伊那ぼたん」は哲学書の他に小説や詩、映画に音楽も登場するといった、大学生に刺さる作品ですので、気になった方は是非読んでみてください。

ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました。気温の変化が大きい日々が続いていますので、どうかご自愛下さい。

【新歓布教blog第1回】『私だって青春したいですよ、本当は。』を今すぐ読んでほしい【通称"だったい"】

※非公式の略称です。


かいたひと: うらん


百合好きの皆さん、Justice for Girls. (流行らせたい挨拶)


新入生の方は合格おめでとうございます。

京大に入学したからには常識にとらわれず自由な学生生活を送っていただきたいですね。様子のおかしいオタサーに入ってみるとか。コワクナイヨ


さて、この記事をお読みになっている方の大半にとって「コミック百合姫」と言われたら説明は不要でしょう。
2005年創刊、百合界の最前線を常に走り続けてきた百合漫画専門誌ですね。

 

20年の歴史の中でも色んなことがありました。ライト層・男性読者層向けだった百合姫Sが統合されたり、月刊化して連載がボリューミーになったり、異世界ブームを受け異世界系百合が量産されたり……。

そんな百合姫でいま何が起こっているのかというと、ずばり20周年イヤーでゲスト読切がムキムキになり新連載ラッシュが発生しています。

 

特別ゲスト読切については『立花館To Lieあんぐる』『全部君のせいだ』のmerryhachi先生、『ハナヤマタ』『おちこぼれフルーツタルト』の浜弓場双先生、『ひまわりさん』の菅野マナミ先生など百合姫初参戦の超豪華執筆陣により百合漫画アベンジャーズと化しているので要チェックです。

そして新連載のほうですが、ゆあま先生やシクシク先生といった百合姫再登場作家陣で土台を固め、うさみみき先生やいくたはな先生、当麻先生など百合作品で名を馳せ満を持して百合姫に上陸してきた作家陣で期待値を底上げし、そのほか新進気鋭の百合作家たちに展望を感じさせられる隙のない布陣が形成されています。

内容についてもラブコメからシリアスまで幅広く網羅的な印象。強いて言うならホラーっぽいのが多いですね。


さてようやく本題。20周年の新連載ラッシュで始まった作品のうち私がイチ推ししているのが、そう。

『私だって青春したいですよ、本当は。』

です。

『私だって青春したいですよ、本当は。』第1話 扉絵

 

いいタイトルですが長くて取り回しが悪いので、以降「だったい」と称することにします。

 

まちがえた
(『ガールズバンドクライ』公式YouTubeチャンネル「視界の隅 朽ちる音」映像より)

作者の尾野凛先生は第23回・24回百合姫コミック大賞で翡翠賞を受賞され、読切掲載などを経て本作の連載に至っています。
2021年11月号の読切『うわさの花子ちゃん!』は、恋に奔走する主人公がかわいい、最後には心が締め付けられながらもあたたかい気持ちになれる良作です。泣ける。

受賞から5年、満を持して始まった「だったい」。
個人的にはここ5,6年の新連載のなかでも一、二を争うお気に入りです。(争っているのは『サルビアのブーケ』)

 

先程も紹介した通り著名な百合作家陣も名を連ねる新連載攻勢のなかで、「だったい」の何が私たちをそこまで惹きつけるのか。
その魅力について語っていきたいと思います。

 

長くなりそうなので先に第1話が読めるリンクを貼っておきますね。こんなblogを読むより自分の目で確かめてもらったほうが早いので。

 

ichicomi.com

 

あらすじ

趣味は読書、勉強も運動も普通。自分はモブだから…とひっそり生きている高校生・乙部紫は、いつもクラスの中心にいる藤見晶子のことが苦手だった。

しかし、そんな晶子と同じ園芸委員になるや否や、気さくに話しかけてくれる彼女のことを、紫はあっという間に好きになってしまった。

どうにかしてお近づきになれないか…?と思っていた矢先、今度は晶子が失恋して泣いている場面に遭遇してしまい…。

ちょろいモブ陰キャとキラキラ女子、前途多難な青春ガールズ・ラブコメ!

(一迅プラスより引用)

 

陰キャ×陽キャの時代

みんな大好き、陰キャ主人公と陽キャヒロインの百合です。最近多いですね。

あらすじにもあるように、主人公の乙部ゆかりさんはモブを自称する生粋の陰キャ。挙動は変だし、脳内はうるさいし、陽キャへの謎の偏見と憧れを持っています。……なんか甘織れな子みたいだな……。

この流行りの脳内うるさ系陰キャ主人公、言ってることにめっちゃ共感できてしまうのでズルいんですよね。一人になりてえ衝動で予定ドタキャンするところとか……。ペアで買う縁結びのお守りに一々「商業主義的!」とか思っちゃうところとか……。

 

挙動が不審すぎる(第1話 p.34~p.35)

 

対する藤見晶子さんは一軍キラキラ陽キャなわけですが、この人があまりにも光の陽キャすぎてあっさり陥落してしまうゆかりさんがちょろ可愛い。呆気なく「私だって青春したかった」とか言い出してしまう。お前……! 陰キャの誇りは……!?

 

でもしょうがないんですよね。藤見晶子というキャラクター、本当にいい味を出している。

話したこともないゆかりさんに屈託のない笑みで喋りかけてくる。その奇行を目にしても、面白がりはすれど馬鹿にする素振りは微塵もなく。一人で昼食をとっているゆかりさんをグループに誘う気遣いをする一方、「なんでいつも一人で行動してるのぉ?」と痛いところを突く質問には「ゆかりってなんでも一人でテキパキできるんだもの」と120点のフォローを入れる。

非の打ち所がないですね。読めばきっとあなたも晶子さんのことが好きになる。あなたもわたしも乙部ゆかり。

 

 

秘密の共有は蜜の味

と、私は百合を読むとき常々思っています。

百合って何? と聞かれたら「女の子同士の、特別な関係性」と答えるようにしているんですが、この「特別」は二人だけの秘密を共有するだけで完璧に達成されます。

 

「だったい」は晶子さんの裏の顔、すなわち失恋しそうで傷ついている本心を、ゆかりさんがひょんなことからただ一人知ることになるところから始まります。晶子さんにとってゆかりさんは、愚痴を聞いてもらえるただ一人の特別な相手になった。いつもグループで明るく振る舞っている晶子さんが、ゆかりさんにしか見せない多様な表情。いいですね。

 

二面性のあるキャラクターっていいですよね(第2話 p.11)

 

ただこの秘密の共有も、まだ不完全なものといえます。ゆかりさんは芽生えてしまった恋心を、そして晶子さんは失恋という言葉の真に指し示すものを……。

いったいここからどうなってしまうんだ……!?

 

 

絵を褒めるゾーン

表情が良すぎる。近年稀にみる刺さり方をしています。

第1話 p.49

すき……………………。

 

 

藤見晶子という少女 ※ネタバレ有

要領を得ない見出しですね。でもなんかそんな感じのことが言いたい。要するに自己満感想垂れ流しタイムです。

最新7話までのネタバレを含むので、回避したい方は「余談」まで飛ばしてください。

 

この作品、言ってしまえば晶子さんの好きな相手に関するミスリードが施されています。従姉妹の天理さんとイケメン先輩を取り合っているのかと思ったら、実は晶子さんが好きなのは天理さんのほうだった……。

恥ずかしながら私は、第5話ラストシーンでこの事実が判明するまでまったくこの可能性を考慮に入れていませんでした。おかげで没入できて、第5話を読了したときの衝撃が最大になったわけですが……。経験が足りないとか言うな

 

なんでこんなに騙されてしまったんだろうと読み返しながら考えたんですが、この「だったい」、当該シーンに至るまで「晶子→天理」の匂わせが徹底的に排除されているんですよ。

ミスリードを利用する作品でしばしば見られるような「読者へのヒント」としての匂わせが、まったくといっていいほどない。

 

じゃあ天理さんに本気で恋しているはずの晶子さんが、一緒にいるときどう振る舞っているのかというと、ちょっとした触れ合いにドギマギしたりせず、普段通りを徹底しているんですね。あるいは三条先輩とのイチャイチャを見せつけられていても、ポーカーフェイス&心の中でブチギレのスタンス。

だから「晶子さんはもしかしたら天理さんのことが好きなのでは」と読者に考えさせる描写が入らず、私はあっさりミスリードに引っ掛かってしまったわけですね。

 

で、読者を騙すほど強固な、晶子さんの本心を隠すこの仮面について、改めて考えさせられます。

それは陽キャ社会のイジりあい文化によって鍛えられたものでもあるのでしょうし、度重なる失恋経験によって培われたものでもあるのでしょう。

「死ぬまでに何度も失恋すると思う」から、一々心を落ち込ませていてもしょうがない。愚痴を言う機会があっても、見せつけられることに怒りはすれど自分がそこに割って入ろうなどとは考えない。

そういう処世術で心を守って生きていく。女の子が好きだと気付いたときから晶子さんはそういう決心をしたのでしょう。

ここまで理解して、ただでさえ光の陽キャとして読者の心を掴んでいた藤見晶子という人物が、複雑で強い情念を内に秘めたキャラクターとして完成するんですね。

キャラが単体で魅力的な百合作品は傑作になりえる。私は「だったい」の大きなポテンシャルを心の底から信じています。

 

本作、記事前半でも言ったような「陰キャが陽キャに心をかき回されるラブコメ」としてある種明るい感じで始まりながらも、晶子さんを取り巻く恋愛の事情についてはかなり悲恋チックなテーマを取り扱ってるんですね。

同性のことが好きな自分について、「変なもの見せられたのはゆかりのほうだし」「気持ち悪いでしょ」「だって怖いでしょ?」と苦悩する等身大の思春期の女の子が描かれている作品は減ってきているように思いますが、こういう要素も個人的に「だったい」をおすすめする理由だったりはします。

 

さてしかし、そんな晶子さんを孤独から救いうる人物がいます。そう、乙部ゆかりさんです。

彼女は物語の序盤で、相手が女の子であることに葛藤する素振りを見せないまま晶子さんに恋してしまっているので、6話で晶子さんの言ったように「気持ち悪い」という感想を抱いて突っぱねたりはおそらくないわけです。

晶子さんの恋心の真相を全て知ってはいなくとも、その恋を諦めなくていいと応援してくれた。

「生まれて初めて味方してもらった」「あんな言葉、一生に一度でももらえると思ってなかった」。ゆかりさんの(誰かの引用ではない、自分の)言葉が彼女自身の想定以上に晶子さんの力になりえたこと、境内までの戻り道を思わず走り出すほどの力になりえたことを想うと、胸が熱くなります。

 

けれど、自分が同性を好きだと知ったらもう同じようにはいかないだろう……。

その期待をいい意味で裏切りうるのが乙部ゆかり、本作の主人公なのです。

 

つまり、自称モブ陰キャの物語はここから。(現在最新第7話)

がんばれ、乙部ゆかり。

 

 

 

余談

もともと平安貴族モノになりそうだったらしい。メイン二人の名前もおそらく紫式部と中宮彰子から来てますね。

平安……すなわち京都……つまり、我々。

京都大学百合文化研究会は、会を上げて「だったい」を応援しています。(非公認)

 

 

さいごに

『私だって青春したいですよ、本当は。』は百合姫20余年にわたる「百合姫」の歴史においても最高傑作クラスとなるポテンシャルを持っている。

これだけ宣言しておきます。

不用意に大げさな言葉を使ってると適当言ってると思われそうですが。

 

たぶんメロンブックス京都店で単行本+最新2話ぶんの掲載されている百合姫はギリ買えると思うので今すぐ購入することをおすすめします。

 

www.melonbooks.co.jp

 

では! よい百合ライフを!