「私達の選んだ1コマ」大賞2022①

はじめに

(編集責任:白雪)

 

 ごきげんよう。もう今年も終わりですね。年の瀬と言えば、百合文研では1コマ大賞の季節です。

 

 と、いうことで本稿は2022年12月7日に開催した百合文研歳末恒例(?)の「私達の選んだ1コマ」大賞の開催内容についてまとめたものです。

 去年も開催したこのイベントですが、今年は発表者数も、発表者の準備の度合いも一段と気合が入っていたように感じます。会員一人一人が選んだ強すぎる「1コマ」の数々。これを見て、皆さんも2022年の百合ライフを振り返りませんか。

 

 なお、本記事は白雪の書いた伝聞調の章と発表者が自ら書いた章が混在しているため文体が箇所によって異なりますが、その点はご了承ください。

 

 

「私達の選んだ1コマ」大賞とは?

 本編に入る前にまず今回の概要について簡単にご説明しましょう。企画者の白雪の出発点としてネット流行語大賞みたいなのを百合文研内で行いたいという思いがありました。そして、漫画読みサークルが前身となっているサークルであるから、流行「語」よりも印象に残った「1コマ」に注目する企画に落ち着きました。

 

 1コマといっても、媒体は漫画に限らず、百合作品の一部ならそのメディアはアニメでも小説でも良い、として会員から「私の選んだ1コマ」を募りました。特に今年はアニメの1コマ、というより1カットからの投稿も多く、そのようなところは前身の漫画読みサークルから少しずつ巣立ち始めているのかな、といった気もします。

 

 また、作品の発表年も一応、「会員が今年触れた百合(だと自分では思っている)作品ならば何でもよい」としていたのですが2022年に出たもの縛りで押さえるべきところを押さえてくれる会員も多く、結果として2022年と言う時代を振り返ることもできました。

 

 

それぞれの会員の「私の選んだ1コマ」2021

 さて、能書きはこれくらいにしてそれぞれの会員に熱い推しコマ・推しシーンを語ってもらいましょう。

 

 

レニの選んだ「1コマ」:『MADLAX

MADLAX』26話

 

 皆さん、2022年に一番熱かった美少女ガンアクションって何だったと思いますか? 『リコリス・リコイル』? 実は違うんですよ――。

 

 引継ぎをしても会長の座も譲らなければ1コマ大賞の座も譲らない。圧倒的トーク力と映像を巧みに使った構成で参加会員全員の興味をかっさらっていったのは今年も会長のレニさんでした。

 

 『MADLAX』は2004年に放送された、美少女ガンアクション三部作の第2作目。

運命で結ばれた2人の少女の謎と、情報犯罪組織との対決を描いた作品で、「美少女ガンアクション」「オサレポーズ」等のオサレな演出や、挿入歌「ヤンマーニ」はあまりにも有名とされています。

 

 本作にはマーガレットとマドラックスという2人のヒロインが登場します。出身地も何もかもが正反対な2人の関係は、語れば即ネタバレという作品紹介の鬼門になるのですが、高度に抽象的な表現をすると「マーガレットの罪をマドラックスが背負っている」という関係にあります。そして、この最終話で披露されたマーガレットのオサレポーズは1話のマドラックスの初戦闘シーンと対比的に描かれており、マーガレットがこれまでマドラックスに負わせてきた罪を受け入れたシーンであることが、今まで作品を見てきた視聴者ならばすぐに分かるのです。

 ただ、それだけで終わらないのがこの作品の恐ろしいところで。

 

 件のオサレポーズでマーガレットが発した「見つめてるよ」の言葉は、この場面でも流れている処刑ソング、通称「ヤンマー二」の歌詞に対応していることがわかります。即ち、「ヤンマー二」自体がマドラックスからマーガレットに対する呼びかけの歌と解釈することができます。そして、「2人を結んでる」の歌詞でマーガレットは引き金を引き、曲が終わります。即ち、この銃撃によってマーガレットはマドラックスに応え、ようやく2人は一緒になれたことを示唆しているのです。

 

他にも、

  • 枚挙に暇のないバチクソオサレ演出
  • 絶対に2回見たくなる(2回見ないと分からん)伏線の数々
  • 魂で結ばれた2人、主従愛、殺し愛、隣のお姉さん、実質ほむらと杏子、「妹になってくれる?」、少女革命

     


     

などの要素が含まれており、非常に興味深い作品となっています。皆も『MADLAX』を見よう!

 

他の会員からのコメント

上回生はゼロ年代の百合アニメについて語る流れができつつある。(白雪)

 

2022年の覇権百合ガンアクションアニメは『リコリス・リコイル』ではなく『MADLAX』でした(うりあ)

 

ヤンマーニ」だけはニコニコMADで知っていたけど、これ百合作品だったんだ……。(月海)

 

白雪の選んだ「1コマ」:『Liliology』

百合文化研究会 11月祭出店POPより

 

 えっ、今回の発表でネタに走ったの私だけですかぁ?

 

 ということで白雪からの今回のネタ枠はこれ。こちらは先月に11月祭で頒布され、今月末にはC101でも頒布する予定の弊サークル会誌『Liliology』Vol.1 に掲載されている会員自己紹介の前に配置された図を抜き出したものです。もちろん実際の百合文研の派閥はもっと入り組んだ図になるので、こちらはかなり単純化しています。それでもとっかかりとしてはある程度インパクトはあったようで、11月祭当日、この図の前で足を止めてくれる一般参加者も多かった印象がありました。

 本当に良い思い出となった11月祭。百合文化研究会の2022年の活動を振り返るにあたって、そんな11月祭を象徴する何らかの1コマもまたねじこみたい。その思いは決してネタに走りたいというだけではありませんでした。

 

 考えてみるとこの図で一際目を引く「右派」「左派」というのは去年の11月、漫トロピーさんの会誌をユリ裁判した時に出てきたものなんですよね。個人的にはあのユリ裁判が百合文研会誌作成の第一歩だと思っていて、そう考えると会誌作成はこの図の原型から始まったといってもいいのかもしれません。完全に内輪ネタではありますが、個人的には2022年を語る上では11月祭の思い出ともども、外せない1コマになりました。

 

 

他の会員からのコメント

確かに2022年の百合文研を語る上では外せない1コマ。改めて見てもよくできてますね。(うりあ)

 

ヤバ図(147いいね)(レニ)

 

 

白雪の選んだ1コマ:『ストロベリー・パニック

ストロベリー・パニック』26話

 

 百合作品史上最強の負けヒロインにして最強の友人キャラ、キマシタワー! たまりませんわ~!

 

 そしてこれが白雪の真打、ネタバレなんか知ったことか、ということでぶち込んだのがこの1コマ……なのですが、発表では時間の関係及びあまり全てを語ってしまうとネタバレになってしまうので本当にさっと流したので、この場ではもう少し詳しく語ってみたいと思います。

 

【『ストロベリーパニック』 あらすじ】

聖ミアトル女学園、聖スピカ女学院、聖ル・リム女学校とその共同宿舎であるいちご舎を舞台に、数組の乙女たちの百合色学園ライフを描く。美少女ゲーの系譜を受けた萌え文化と少女漫画的な女学校要素の初の本格的な結節点にして極の1つといっていい作品。

 

【相関図】

 

【状況説明】

 物語のハイライトもハイライト。細かい説明は省くが渚砂(赤髪の子)と玉青(青髪の子)が今まさに2人で学校の代表に選ばれようとしている時に、ようやく自分の渚砂に対する気持ちに気付き、乱入してきた静馬(白髪の子)が多勢の前で大胆な告白をする。

 それを受けた玉青は渚砂の気持ちを汲み、自分の気持ちを押し殺して渚砂の背中を静馬に向かって押す。

 

【考察と推薦理由】

 この作品は百合における負けヒロインが負けるシーンとしてだけでも十分に「1コマ」に値すると言えるかもしれません。でもそれ以上に興味深いのが玉青ちゃんには他の属性――そう、友人キャラという属性もまた付与されているポジションだということを考慮するとこのシーンを単なるヒロインレースの負けシーンだけでは片づけられないと思うのです。つまり、このシーンは片思いキャラとしては負けヒロインでも同時に主人公の友人キャラとしては主人公の幸せを願って積極的に背中を押すシーンでもあると捉えることができるのです。

 

 と、その前に。そもそも友人キャラとは何でしょうか。友人キャラと言うのは主に恋愛シミュレーションゲームに登場する男主人公の周りにいるモブ男キャラを想起してもらうのがいいと思います。大抵は主人公をかっこよく見せるために容姿や性格が残念に抑えられていることが多く、男同士の関係は物語のメインストリームにはなりづらいと言えます。その点、「友人キャラ」を百合作品に落とし込むとどのようになるのか、をはっきりと示したのがこの作品の特徴でもある、ということが見て取れると思います。つまり、百合作品における友人キャラはモブではなく主人公の恋愛を応援し、更にはヒロインレースに途中まで参加することができることを示したのです。

 

 このような役回りが玉青ちゃんに割り振ることができたのは『ストロベリー・パニック』自体がもともと美少女ゲームなどを扱う雑誌の企画から始まったことも関係がある可能性もあるのでしょうか。出自的に「友人キャラ」というものを観念しやすい土壌にあり、だからこそ友人キャラと恋愛ヒロインのハイブリットが生まれた、と。そして、ヒロインと友人キャラを兼ねられるというのも女性に求められるイメージ(負けヒロインだといっても『とらドラ』みたいにバチバチやり合うのは稀)や同性同士と言う、異性同士よりも「友人」が成立しやすい関係性だからこそ成し得たものなのかもしれません。

 

 しかし改めて見ると玉青ちゃんって負けるべくして造形されたヒロインではありますよね。秀才設定も、渚砂ちゃんに好意を抱くきっかけになったこれまでは1人部屋だった設定も、本来は物分かりが良くて最終的には相手のために諦めてしまえる人物だと示唆していたと振り返ってみると思えてなりません。だからこそ、本来の彼女からは離れているのかもしれない中盤などの変態的な渚砂への執着を引き出した渚砂という存在の大きさ・罪深さを考えずにはいられません。そんな2クール通して様々な表情を見せてくれたその全てが玉青ちゃんの魅力で、『ストロベリー・パニック』を神作品にしている重要な要素だと思います。玉青ちゃんの魅力はやっぱり見てもらわないと伝わらないので皆さんも『ストロベリー・パニック』を見ましょう。いちご舎でパーシバルも待ってるぞ!

 

 

他の会員のコメント

負けヒロイン爆誕。夜々ちゃんも好きです(レニ)

 

 

もりしの選んだ「1コマ」:『ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ 完全版』

『ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ 完全版』

レズビアンだからって言ったって女子のことを誰でも愛せると思うなよ、みたいな。

 

【あらすじ】

 もともとヘテロだった「あすか」と同性愛者だと噂されていた「めぐみ」の2人の物語。

 めぐみは同性愛嗜好であることから周囲から陰口を叩かれたりしていた。そんな中、異性愛嗜好のあすかは周囲などを気にせずにめぐみと交流していく。そんな中でめぐみはあすかの態度が友人にしては近すぎる気がしてきて、めぐみが同性愛者であるという噂は本当でめぐみは自分自身に恋をしているのではないか、と思うようになる。

 そんな最中、めぐみはあすかに「2人きりで会いたい」と言い出す。それは、めぐみからの「自分には彼女がいる」というカミングアウトだった。めぐみはあすかのことを友人だと思っていたからこそ本当の自分をあすかに知って欲しかったのだった。選ばれた1コマはそれに続く1シーン。

 

【考察と推薦理由】

 このカミングアウトであすかは女友達に恋をしていたのは自分の方だと気づき、「2人きりで会いたい」と言う言葉が相手からの告白だと期待していた分、片思い相手に彼女がいたことのショックが大きくて泣き出してしまう。それと対比するようにめぐみの方はカミングアウトが受け入れられたことで安堵しており、「ごめんね、軽蔑するよね」「友達でいてくれる? 」などとあすかの友情を確かめながら抱き着く。後ろから抱き着いているのであすかが泣いていることにめぐみは気づいていない。

 その対比が切なくて、届かない思いやすれ違っている思いが1つに込められた1コマだと言える。

 

 

他の会員からのコメント

今回の一コマ大賞の中でも「一コマ」の威力がずば抜けていて、セリフも相まって一瞬で心に突き刺さってしまいました……。買います。(月海)

 

最近『レスビアンの歴史』や性的マイノリティ当事者のエッセイなどをよく読んでいて性について考える機会が多い分、興味が惹かれました。レスビアンが女性になら誰にでも恋愛感情を抱くことがないって言うのは真実なんですよね。それはヘテロが異性なら誰にだってすぐに欲情するわけでないのと同じ。と、いうか寧ろゲイの方は比較的頻繁に相手を変えるのに対して、レスビアンの方は特定の相手と比較的長くお付き合いする傾向にあるようです。

 令和になってからはジェンダーダイバーシティが広まって思考実験的なものを除いて同性愛者を差別するのが当たり前の世界観は描かれづらくなってきたと思いますが、5年ちょっと遡るだけでそういう時代は普通にある、と発表年も考慮すると時代的変遷を考えるうえでもやっぱり読んでおきたい。(白雪)

 

 

 

あるごんの選んだ「1コマ」:『羽山先生と寺野先生は付き合っている』

『羽山先生と寺野先生は付き合っている』

NFで"出会っちゃった!"

 

 11月祭(NF)で自分もシフトが入ってないのに百合文研のブースに入り浸っちゃった口ですけど、あるごん君もそんな入り浸り仲間でした。だって1日中百合漫画が置いてあるんだよ? 読まなきゃ損じゃない?

 ということで11月祭の自分達のサークルのブースであるごん君が"出会っちゃった"、彼の平和主義に刺さってしまったのがこの作品だそうです。

 

【あらすじと推薦理由】

 あらすじはタイトルの通り、「羽山先生と寺野先生は付き合っている」、それ以上でもそれ以下でもない。しかしタイトルに「付き合ってる」と公言するだけあって1話1話の百合密度は胸焼けするほど高いので一度に摂取する量には要注意。

 そんな高い百合密度の秘訣の1つはヒロインである羽山先生と寺野先生のキャラの対照性にある。羽山先生(黒髪の女性)は学生時代、ずっと周囲の言われるままに過ごし、青春らしいことができなかったという過去があった。そして、「先生になっても青春出来るわけではない」と半ばあきらめているようなそんな人物だった。そんな彼女を連れだしたのが寺野先生。

 

 「今やりたいことはなに? 」「このままプールで泳いでみたい」そんな会話から着衣のままプールに入り込んだ2人はそのまま抱き締め合い、接吻する。この百合オタクを殺しにかかってる尊すぎるシーンが水中と言うシチュエーションで更に幻想的になって言うのもまたポイントが高い。

 

他の会員のコメント

百合密度……また新しい概念が生まれてしまった。(O.obscura)

 

12月に学校の図書館で女の子がキスしている画像をまとめスライドにペタペタ張ってると12月が来たなぁって気がしてる。来年になって純粋に読めなくなる前に読まないと。(白雪)

 

 

 

もりぃの選んだ「1コマ」:『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ- 』

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ- 4 話

「1 コマ大賞」とありますが、アニメを中心に触れている自分にとっては「1 カット大賞」と言うべきでしょうか。

 

【作品紹介】
2022 年秋アニメ。監督は米田和弘。アニメーション制作は PINE JAM。「DIY」を題材に女子高生の日常を描く。丁寧なカット割りや演出、キャラクターの魅力を引き出す可愛らしい動きなど、アニメーションとしての楽しみが強いオリジナル作品。


【場面紹介】
ジョブ子がぷりんの家にホームステイすることになり、ぷりんはハンモック作りを手伝う。
その後、部員集めに困っている DIY 部のために、ぷりんがぼそっとアイデアを出す。

 

【解説】
大好きなのに素直になれないぷりんは、主人公・せるふを意識して凝り固まる姿が強調されていたが、第四話でようやく一歩を踏み出した。選出した場面はまさに、DIY を頑張るせるふを応援し、きちんとせるふと向き合っていくというぷりんの宣言である。思春期の難しさを解きほぐすような、暖かさと期待感を感じる回であった。

 

 B パートでは、まず部屋作りのメインであるハンモック作りに対して、ジョブ子は”It’s easy.”と言っている。また、今までの DIY シーンと異なり、ハンモック作り自体はほとんど描かれない。ここで重要なのは、ハンモック作り=きっかけ作りはそれほど難しくないというメッセージだろう。つまり、ぷりんが作っていたのは、せるふと再び向き合い仲良くなるためのきっかけであり、この一連の流れは後のぷりんの行動を後押ししていると言える。加えてぷりんは、昔はせるふとはこんなに仲が良かったこと、せるふとは少し距離が離れてしまったこと、せるふがどんな子なのかなどをジョブ子に語りかけるシーンがある。返しの「あと少し」も、部屋の準備ではなく、「(せるふと仲良くなるのも)あと少し」という意味合いが含まれている。「寂しさ」を放っておけないジョブ子の姿が印象的。

 

 このように、ジョブ子がせるふとぷりん、互いの関係を仲介しながら、ぷりんに大きな影響を与える回であった。既にぷりんがせるふに特別な感情を持っていることは目に見えていたわけだが(属性的には幼馴染のツンデレヒロン)、このような視聴者の視点をジョブ子が担い、周囲を見渡して手を指し伸ばそうとする大人びた少女として描かれているのは、キャラクターを尊ぶ作り手の姿勢が見えていいね。 

 

 

他の会員のコメント

百合を意識したコメントを心掛けてくれたみたいで、もりぃさん含め参加者の皆さんのガチ具合と企画者である白雪の軽さのギャップが開きすぎてる。立つ瀬がない……。DIYはやっぱ1話のエッジのかかったせるふとぷりんの対比が印象的。(白雪)

 

DIYは毎回良質な幼馴染百合を供給してくれますよね。幼馴染百合しか勝たん。(O.obscura)

 

 

 

周回積分の選んだ「1コマ」:『酒と鬼は二合まで』

『酒と鬼は二合まで』

女の子が全く写っていないコマを使ったらインパクトあるかな〜と思いまして。

 

【あらすじ】

 祖父に憧れて、バーテンダーを志す大学生のナオリ。しかし家に呼べるような友人もおらず、いつもひとり寂しくカクテルを作って飲んでいた。ある日誘われた飲み会でお酒が飲めないギャルのひなたに出会う。なんだかんだでひなたはナオリの家に来たが、彼女は実は鬼で、人間に与えられたお酒しか飲めなかったのだ。そこでナオリはひなたのためにカクテルを作る。

 

【選んだコマの解説と1言】

 人外×人間の百合です。このタイプの百合は互いの種族の違いによるすれ違いが生むトラブルが話のテーマになります。ここのコマではひなたが風邪をひいたナオリのためにお粥を作って失敗してしまいます(右のお皿がひなたの作ったおかゆ、左はナオリの体調がちょっと良くなってひなたと狸のために作ったカクテル)。

 怪異の中では頂点にいる鬼であっても、大切な人の役に立ちたいという人間と変わらない悩みを持つという立場と感情のギャップが素晴らしいと思いました。

 星屑テレパスとか、上伊那ぼたんで出そうかなと思っていたんですけど、この2つは被るだろうな〜と思ってこの作品にしました。

 

他の会員のコメント

蓋を開けたら誰も星屑テレパスも上伊那ぼたんも選んでないよ……。(白雪)

 

初見時と解説聞いたあとでコマの見方が変わるの楽しい。(うりあ)

「女の子が全く写っていないコマならインパクトがある」完全にアイデアが被ってしまった……。(月海)

 

人外×百合なだけでなく、酒×百合というのもポイント高いですね。「上伊那ぼたん」もそうですが、お酒が物語にどのように効いているのか気になる作品です。(O.obscura)

 

O.obscuraの選んだ「1コマ」:『Citrus

Citrus』10巻

このコマに関して、これ以上私の貧弱な語彙で説明するのも憚られるので稲葉浩志の力を借ります。B'zのYOU&Iを聞いてもらって……。

 

【作品紹介とコマまでの状況説明】

 『Citrus』はアニメ化もした『コミック百合姫』の主力作品の1つで学園の理事長の孫である芽衣と今時の女子高生・柚子の2人が義理の姉妹になってお互いに惹かれ合っていく過程を描いた作品。

 コマの出典は本編最終巻の10巻。アニメ化された部分でもわかる通り、最初は芽衣と柚子の関係性は険悪だったり名の許嫁などの障害が多かったりなどしていた2人は2人での時間を重ねていくことで互いの気持ちに向き合い、わかっていく。

 しかし8巻・9巻になると芽衣の理事長の孫という立場上、2人の関係の雲行きは怪しくなっていき、引き離される芽衣と柚子。

 そんな中でも最終的に柚子は芽衣に会いに行くことを決意し、これまでCitrus全編通じて登場した様々なキャラの協力を得ながら柚子は遂に芽衣の前に姿を現し、芽衣にプロポーズする。選出した1コマは柚子と再会し、プロポーズを受けた芽衣の1言を切り取った1コマ。

 

Citrusの魅力__泣き顔の描写】

 泣き顔と言うものは人間らしい行動の最たるものの1つで、そこに含まれる様々な感情を反映して多様な面を見せる。そんな多様な「泣き顔」の描き分けが秀逸になされているのが『Citrus』という作品の特色にして魅力の1つ。

 そして選出した1コマもそんなサブロウタ先生の「泣き顔」の魅力が色濃く表れている。芽衣の台詞こそ「大嫌いよ」となっているが、それを字義どおりにだけとらえるのはもちろん早計だ。この直後に芽衣は「大好きよ」と答えており、このシーンの泣き顔及び涙には芽衣の柚子に対する愛憎入り混じった、などと言う言葉では言い表せない多くの思いが込められている。そこに、これまで10巻にわたり紡がれてきた柚子に振り回されつつもいろいろ思う所のあった芽衣の日々を読み込むとこの涙の意味は更に印象深くなる。

 そんな王道百合作品のハイライトから今回は「1コマ」を選出。

 

 

他の会員のコメント

これまで登場したキャラが再集結して主人公に協力してくれる展開って王道だけど燃えるよね。百合アニメだとけもフレ1期とか思い出した。(白雪)

 

B’zで百合作品を読み解くの斬新すぎて好き。(うりあ)

 

 

 

はたはたの選んだ「1コマ」:『魂の関所にて』

『魂の関所にて』

束縛・執着が描かれていますよねっ、素晴らしいですね!

 

【あらすじとコマに至るまでの経緯】

 本作は死後の世界を舞台に、前世での行いのせいで来世に転生することができない少女達2人の関係性を描く。

 白髪の子は前世で富豪のお嬢様の侍女をしていた。そして主人であるお嬢様から思いを向けられ、流されるままにお嬢様との心中を受け入れてしまい、侍女の少女だけが死んでしまう。そして死後の世界から、生き残ったお嬢様が自分以外の特別な相手をまた新しく作ったのを見て、「自分じゃなくても良かった」ことを悟り、絶望してしまう。そんな傷心しきった白髪の少女に黒髪の少女が向けた台詞が選出した1コマ。

 

【コマについての解説と選出理由】

 黒髪の少女がやっていることは言ってしまえば弱り切った白髪の少女の不安定な心理状況に付け込んでいることになる。でも白髪の少女は黒髪の少女の思いを流されるままに受け入れてしまう。生前含め、白髪の少女は流されるまま・受けに徹し、最後は絶望する役回りなのがポイント。そして向けられた思い、「すべて私にくださいな」が意味していることは相当重いが、その思いクソデカ感情がやっぱり百合好きにはたまらない。

 もう一言加えると、実は本作には冒頭に白髪の少女と黒髪の少女の構図を真逆にしたコマがあり、そことこのコマは対応している。それがこのコマの重要性を立証していると同時に最後は白い髪の少女は「執着される側に落ち着く」ことをより印象深くしているとも言える。

 

 

 

他の会員のコメント

すごく綺麗に纏まっている作品だなぁという印象。読んでみたい。(白雪)

 

 

 

 

 

休憩!

 とまあ前半戦は弊サークル1期生を中心に全9コマの発表内容をメインにまとめ、冒頭とラストの対称性の話ではじまり対称性の話で終わりになりました。

 後半戦は弊サークル2期生(2022年入会)・ブログ的にはニューフェイス中心の発表です。