【新歓布教blog 第1回】『SHY』を百合として楽しむ ~"心"と"心"のぶつけ合い~

かいたひと:うらん

 

春先に蠢く百合好きのみなさん、Justice for Girls.(流行らない挨拶)

京都大学の新入生の方は、ご入学おめでとうございます。4月からは新しい環境で、恥ずかしがらずに百合への愛を叫んでいきましょう。

 

さて皆さん、百合漫画は読んでいますでしょうか? 読んでいますよね。

百合戦国時代の令和の世にあって、辺りを見渡せばそこには無数の百合漫画が存在しています。そんな供給過多に嬉しい悲鳴を上げる私達は、ときに他のジャンルに向き合うことをおろそかにしてしまいます。

少年漫画はその代表的なものではないでしょうか。かくいう筆者も、『ワンピース』『鬼滅の刃』といった有名どころはてんで分かりません。

 

しかしながら、そういったところにも百合は存在しています。これは捨て置けません。百合漫画と称される作品でないものからしか得られない栄養もちゃんと摂取していきましょう。一人暮らしを始めると食事が偏りがちですからね。

 

前置きが長くなりましたが、今回紹介する作品はこちらです。

『SHY』第1巻表紙

こちらは『週刊少年チャンピオン』にて連載されている、実樹ぶきみ先生による作品『SHY』です。その人気から、2023年にはテレビアニメ1期も放送されています。

恥ずかしがりやの主人公・紅葉山輝が「シャイ」というヒーローに変身し、地球(ほし)の心を救う戦いのなかで成長していく物語となっています。

 

あらすじだけ聞くとザ・王道の少年漫画といった印象ですが、蓋を開けてみるとこの作品、親友百合、姉妹百合、母娘百合、双子百合……といったふうに百合の万国博覧会状態なんです。夢洲が百合洲になっちゃうよ~~。

急いで詳細を見ていきましょう。

 

『SHY』の百合的ポイント【拳/心で語り合おう】

『SHY』第7巻より。本文には特に関係ないです。

具体的な紹介に移る前に、『SHY』における百合とはどういうものなのかについて解説せねばなりません。

あらすじから察せるとおり、本作の物語は基本的にシャイや他のヒーローたちが敵と戦いながら進みます。

敵をシバきまわしてたら関係性が生まれないじゃん! 対話しようよ!

と思ったそこのあなた。ちょっと待ってください。拳のぶつけ合いとは、すなわち心のぶつけ合いです。

 

『SHY』のヒーローたちは、"心" の力によって変身し、戦います。つまり、彼ら彼女らの振るう拳というのは、心の形そのものであるというわけです。

『SHY』第1巻より

そして、本作においてヒーローの前に立ちはだかるキャラクターの大半は、なんらかの理由で心の悪い部分が暴走してしまった、もとは善良な一般市民です。ヒーローたちはそれを救うため、その右腕に己の心をのせて敵へぶつけるのです。これを百合と呼ばずになんと呼びましょうか。

 

『SHY』が無数の百合で埋め尽くされているのは必然であったのだ……。ということで、ここからは百合の具体例を無限に紹介……したかったのですが、一つ一つのエピソードを順番に消化していく本作の構成の都合上、著しいネタバレを免れません。なので今回は、物語序盤からその関係性が描かれ続けている主人公とその親友の2人を紹介します。

憧れのヒーローで、恩人で、大親友【紅葉山テル×小石川イコ】

『SHY』第1巻より

ヒーロー・シャイとしてひそかに活動している中学生、紅葉山テルのクラスにある日、転校生がやってきます。その少女・小石川イコは、少し前のジェットコースター暴走事故でシャイが救助に失敗し、大けがを負わせてしまった人物でした。

松葉杖をつきながら隣に着席するイコを見て、テルは彼女に恨まれているのではないかと考えてしまいます。

 

しかし実際にはそうではありませんでした。

『SHY』第1巻より

イコはむしろ、助けられてばかりの自分を責めていたのです。その後なんやかんやあって暴走してしまったイコ。自分を助けるために誰かが傷つくくらいならと自害しようとする彼女の心に、シャイは優しく寄り添います。

『SHY』第1巻より

人生においてずっと自責の念に苛まれていたイコにとって、シャイの言葉はどれだけ救いだったでしょう。

その後シャイは見事、暴走したイコの救出に今度こそ成功。イコの記憶にヒーローの勇姿は深く刻まれたのであった。めでたしめでたし……。

 

終わりません。この出会いは、長い長い2人の特別な関係性のプロローグにすぎなかったのだ……‼

 

先の事件でシャイの正体はイコにばれてしまいます。その結果仲良くなった2人。イコはテルのことを友達、親友と呼ぶようになります。

そう、「友達」です。彼女にとってテルは命の恩人であり、感謝を尽くしても尽くしきれない対象のはずです。にもかかわらず、表向きはあくまで友人関係として振る舞うのです。巨大感情はその笑顔の下に隠して。

『SHY』第1巻より

イコはしばしば「シャイの正体を知っている唯一無二の親友」としての立場にこだわりを見せます。テルの "特別" であることに執着するわけですね。インキャで友達の少ないテルは仲のいい友達ができたことに無邪気に喜んでいますが、その子尋常じゃない惚れ込み方してないか? 大丈夫?

 

しかし、イコは所詮一般人です。他のヒーローたちとシャイが共闘している姿を見て、焦りを募らせます。

『SHY』第11巻より

自分も親友の役に立ちたい。シャイは自分のことを救ってくれたのに、自分は何もしてあげられていない。作中では一貫して、明るくて行儀のいいキャラとして振る舞っていますが、その裏にある焦燥、「自分はテルの "特別" として力不足ではないか」という苦悩の大きさは計り知れません。テルがあんまりそれを深く気にする素振りを見せないのもポイントが高いですね。基本的に一方通行です。この鈍感系主人公め!

そしてこの作品、なかなかイコに挽回の機会を与えてくれません。ライバルも定期的に現れるし、イコはずっと苦悩しています。ひ、ヒドい……‼

まあ百合のオタク的には美味しいんですけどね。果たしてイコの葛藤と2人の関係性の行きつく先とは……⁉ ぜひ本編をチェックしていただきたい。

『SHY』第1巻より。急にどうした、小石川さん⁉

余談ですが、テレビアニメ第4話のED「君だけがヒーロー」は、イコがテル/シャイへの想いを3分半みっちり歌うキャラソンとなっています。よければ聴いてみてね。

 

他にも百合、あるよ【おわりに】

さて、最重要カップリングを紹介できて筆者は割と満足なのですが、百合の万国博覧会などと宣った以上このまま終わるのは若干忍びないですね。改めて、『SHY』が百合に満ち満ちた作品であることは強調しておかなくてはなりません。

『SHY』第4巻より

『SHY』第6巻より

1エピソードとしてきっちり描かれる関係性のほかにも、先輩ヒーローに喝を入れられつつも良好な関係を築くシャイや、幕間に短編として挟まる、民間人のちょっとした日常のなかに生まれる関係性など……楽しめる箇所は数えきれないほどあります。

このようなタイプの作品における百合は、いわゆる百合漫画と呼ばれるものばかりを追っていてはなかなか出会うことができないでしょう。時には他ジャンルに手を出してみるのも重要ということですね。百合のオタクには旅をさせよ。

ということで、締めの言葉とさせていただきます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。新入生の皆さん、よい百合ライフを。