【百合漫画大賞2021レビュー⑥】きみが死ぬまで恋をしたい

最近スタァライトされてきたはたはたです。しっかしあそこまで素の重い感情を相手にむき出してぶつけ合う(物理でも)作品って本当に破壊力高いですね…。よくわからない部分も多かったので多分また数回見に行くと思います。まだ見てない人も映画館で見てみることをお勧めします。百合好きは損しないと思いますよ。

【第5位】きみが死ぬまで恋をしたい

 

 この物語は、身寄りのない子供たちを受け入れ教育し、戦争に駆り出す、孤児院兼国戦用魔術兵器育成機関(1巻9ページより引用)が舞台です。戦闘が不得意で、平穏を願う少女のシーナと、桁違いに強くて戦争に行く時でも笑っている精神的に幼めな少女のミミの二人を中心に話は進んでいきます。この二人が同室となり、日常をともにしながらも、ミミは度々戦争に駆り出され傷つきかえってくる。このような生活の中で、彼女らの心がいかにふれあい、変わっていくのかというようなことが描かれています(あくまで僕の感想です)。

 さて、早速この作品を読んで僕がよかったと思ったところを紹介していきたいと思います。

まずは、二人の関係性とその変化です。まぁ、百合漫画ですからね、そこは当然推せるポイントになりますよね。性格というか性質が真反対の二人が互いに影響を与え合って変わっていく百合、非常にいいものです。最初、シーナはミミに対して、理解できないという気持ちからくる苦手意識がありました。しかし、ミミも怪我すれば痛いし、痛いものは嫌だということを理解し打ち解けていきます。

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ちょっと理解できるようになったシーン

 とはいえ、この時点ではまだまだ、シーナのミミへ向かう感情は深いとは言えないと思います。なんやかんやあってキスとかして心は揺さぶられてますけど。この後、シーナとミミは友達であることを確認し、ミミの秘密を共有したり、微笑ましい日常を送ったりして徐々に仲を深めていきます。その後、シーナは戦場から血にまみれて帰ってきたミミに対して、戦争で戦った相手にも帰りを待つ人がおり、戦争というものがいかに残酷なものなのかを説きます。この後、保険医(ミミの保護者的な立ち位置かつ戦闘後のアフターケアをする役の人間)にその考えの甘さを諭されたうえで、そのうえで本当に何を望むのかを考えるように言われ、結局出した答えは”ケガしないで帰ってきて”というものでした。ここにきて、シーナからミミへの感情が、ちょっと怖い→気になる子→友達→家族的な関係(導いてあげる感じの意識強め)→家族的な関係(親愛の情高め)というように推移しているように感じました。自分の考えと現実のギャップに気づくにつれて仲が深まっていく感じが何とも尊いものがあります。

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自分の願いのアンサーをだすシーン

 しかし、ミミに対するシーナの感情はどちらかというと母親っぽい感じで、また、シーナに対するミミの感情も母親に向けるそれっぽくもあるので、もしこれがはっきりした恋愛感情になるならば、どのようにしてそうするのかは気になります。

また、シーナ、ミミのクラスメイトのセイランとアリの関係性も非常に尊いものです。この二人の関係性は最初からほぼ恋仲として完成しています。真面目で、施設に対して恩義を感じているセイランは戦争に行って施設に恩返しすることを願っている一方で、アリのほうは、第一にセイランのことを考えており彼女のことを失いたくないと思っています。しかし、セイランの強い意志を尊重して、アリはセイランに戦争に行かないでほしいとは言えないんです。そして、セイランを心配しながらも支えているんですよね。これが、切なくも美しく見えて本当に尊い…。

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切ないですね…

振り返ってみると、この二人はミミとシーナの二人とは心持ちが結構対照的なんですよね。ここら辺も今後につながってくるかもしれないですね。今月四巻が発売なのでそれが非常に楽しみです。こんなところでレビューを終わろうと思います。