【新歓企画】新入生にまず読んでほしい百合作品 part.2

かいたひと:うらん

前回の続きです。part.1は以下のリンクから。

※作者様の名前は敬称略とさせていただきます。

ku-yuribunken.hatenablog.com

 

11.わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった⁉)(みかみてれん)

ジャンル:青春、ラブコメ

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(ムリじゃなかった!?)』1巻より

推薦者:うらん

 通称「わたなれ」。今最もアツい百合作品(個人の感想)。とにかくヒロインひとりひとりが魅力的で、彼女らとの関係をうまく築くために主人公が頑張るその王道的な話の筋に、みかみてれん先生の力量がふんだんに発揮されている。まさしく「百合ラブコメライトノベルの王者」という佇まい。近いうちに必ずアニメ化するはずなので、今のうちに推しておきましょう。

 

12.となりの吸血鬼さん(甘党)

ジャンル:ほのぼの

『となりの吸血鬼さん』1巻より

推薦者:点々

 たしかにこれは非物語かもしれない、しかしここには純粋な百合が現前している。ゆっくりと、ただ着実に進展していく関係性は美しく、荒野に凛と咲く一輪の花のようでもある。もしも「百合」という言葉を蒸留し、純度を極限まで高めたとしたらきっとこの作品のようなものが現れるだろう。言わずと知れた吸血鬼百合の金字塔、未読の方には是非一度手に取って読んでいただきたい作品である。

 

13.ハッピーシュガーライフ(鍵空とみやき)

ジャンル:ホラー

『ハッピーシュガーライフ』3巻(上)2巻(下)より

推薦者:百江羽入

 百合作品だと『ゆるゆり』や最近だと『大室家』などほのぼのとした作品ががパッと浮かびますが、この作品はそれとは真逆の純愛サイコホラーになります。
 好きという感情があるラインを超えると怖くなりますが、この作品はこれがいいスパイスとなっています。

 

14.羽山先生と寺野先生は付き合っている(黄井ぴかち)

ジャンル:青春、ほのぼの

『羽山先生と寺野先生は付き合っている』1巻より

推薦者:あるごん

 羽山先生と寺野先生はとある女子校の新人教師。ある日の朝、いつも朝が弱い羽山先生がイキイキしてるし、寺野先生はいつも以上に元気だし、かと思ったら二人してなんか照れて目も合わせられてない……さてはこの二人、昨日からつき合い始めたな!?
黄井ぴかち先生の柔らかいタッチで描かれる、幸せあふれる「大人の青春ラブコメ」。君も高い百合密度に焼かれてみよう!

 

15.今日はまだフツーになれない(U-temo)

ジャンル:青春、ほのぼの

『今日はまだフツーになれない』より

推薦者:うらん

 新入生というか全人類に読んでほしい作品。「フツー」から少しズレた2人の名前のつけられない関係性が尊い。ほのぼのとした日常の中にその特別な関係の片鱗を見つけながら味わいたい、読み応えのある作品です。1巻完結なので読みやすいところも高評価。

 

16.灼熱の卓球娘朝野やぐら

ジャンル:青春、スポーツ

灼熱の卓球娘』1巻より

推薦者:でるた

 卓球を通じて選手たちの関係性が描かれています。最初は萌え重視の展開なのですが、試合が進むにつれて緻密に描かれた卓球の描写や、ラリーを介した熱いパッションを感じられます。ライバル、幼なじみ、先輩後輩、ダブルスペア、歪んだ片想い……作中で描かれる関係性も多種多様で、ヒットする関係性が必ず一つはあるはずです。ちょうど続編が今年の2月から始まりましたので、卓球が好きな方も百合が好きな方も、両方嗜む方もぜひ。

 

17:アネモネは熱を帯びる(桜木蓮

ジャンル:恋愛、シリアス

アネモネは熱を帯びる』1巻より

推薦者:まっつごー

 ちょうどよいほろ苦さに脳を焼き尽くされる、そんな作品です。

 

18:エクレア あなたに響く百合アンソロジー シリーズ

ジャンル:アンソロジー

『エクレア orange あなたに響く百合アンソロジー』より

推薦者:うらん

 豪華作家陣が「百合」というテーマに正面から向き合った短編が詰まった、究極の百合アンソロジーコミック。アンソロジーは「おねロリ」や「メイド」などテーマが具体的に定まっていることが多く、手に取るものに迷う人もいるかもしれない。この「エクレア」を読めばまず間違いないので、何も考えずとりあえず読もう。

 

19:君と綴るうたかた(ゆあま)

ジャンル:青春、シリアス

『君と綴るうたかた』2巻より

推薦者:Cardinal

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 素晴らレい純爱百合

とても良い商品を見まレた。情绪表現繊细。

小说を通レて星川雫と朝香夏织は出会ソ、夏织は雫に迫って夏休み期间限定で恋人关係になります。レカし、夏织はあゑ重要事项秘密を抱えていたゐてず。何故夏织は夏限定の恋人をすゑになっだゐか?これが明カされゑ时雫は真実と自𡯂自身に直面レなければなリません。

登場人物达は皆んな誰カのために生きていて、雫はそんな人々の優レさに触れて成长レていきます。そして彼女は夏织とついに向き合ラのです。

これはおすすめで、百合はとてもクォリティが高いです。令和最新版で安心!私と私の会員もこれを満足しています。これは買うしかない。

 

20:ルックバック(藤本タツキ

ジャンル:青春

『ルックバック』より

推薦者:うらん

 ご存じ『チェンソーマン』の作者・藤本タツキによる作品。6月には劇場アニメも公開される。

 2人の少女が出会い、2人で夢中で漫画を描いて漫画家を目指す、青春物語。他者への嫉妬や漫画への情熱、一緒に分かち合う喜び……。キャラクターの感情の動きが、繊細な画力と巧みな構成でこれでもかと表現されている。

 ラストにはきっと誰もが涙するだろう。

 

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以上、前後編合わせて20作品を紹介してきました!

初めて知った作品に興味を持ったり、推している作品を見つけて「分かってるね……」と頷きながら読んでいただけたでしょうか。

弊会には、ここで紹介した作品以外にも布教したい作品が 無限 にある会員が大勢います。

彼ら百合ソムリエにおすすめの百合作品を尋ねれば、要望に合った素晴らしい作品を教えてくれるでしょう。

新しい季節、まだ見ぬ百合との出会いを求める新入生の皆さん、もちろん新入生以外の皆さんも、ぜひ京都大学百合文化研究会にお越しください!!

【新歓企画】新入生にまず読んでほしい百合作品 part.1

かいたひと:うらん

 

新入生の皆さん、Justise for Girls. 京都大学百合文化研究会です。この度はご入学おめでとうございます。

 

社交辞令はここまでだ。百合を読め。

とはいっても、百合って遍く存在しますからね。このユリキタスな時代に、どの百合を摂取すればいいのかわからないという人もいると思われます。

そんな悩みとは今日でおさらばです。京都大学百合文化研究会には、日夜百合作品を鑑賞している強力なオタクたちがひしめいています。

彼らに、新入生に「これだけは読んでほしい!」と自信をもって勧められる作品を聞いてみました。

百合初心者にまず読んでもらいたい有名作品から、多くの人に知ってもらいたいコアな百合作品まで……。

気になった作品はぜひチェックしてみてください。それでは見ていきましょう。

※作者様の名前は敬称略とさせていただきます。

 

1.私の百合はお仕事です!(未幡)

ジャンル:青春、シリアス、ギスギス

『私の百合はお仕事です!』1巻より


推薦者:Cardinal

 こんにちは、私はシリアス星雲のギスギス星からやって来たキョダイカンジョウスコスコ怪人です。私は主に人間の負の感情を好んで食べるのですが、こちらの『わたゆり』はそんな私の好みにピッタリと合致した素晴らしい製品でした。人から愛されるため演技(ソトヅラ)を完璧に演じる白木陽芽、空気を読むのが苦手でいつも対人関係に失敗してきた矢野美月を中心としたメンバーがコンセプトカフェの内と外で繰り広げる嘘と本当の恋愛を巡る修羅場(バトル)は圧巻です。
 本作はまさに修羅場のシーンにこそその魅力が詰まっていると言えます。各々が胸の内に煮詰め続けていたドロドロした感情が一気に爆発しあうシーンが要所要所にあるのですが、その場面の迫力は筆舌に尽くし難く、舌の肥えたキョダイカンジョウスコスコ怪人の私でさえ舌鼓を打ってしまうほどでした。
 とにかく女性同士のギスギスした恋愛が見たい!修羅場を味わいたい!という方はぜひ一度試してみてください。

 

2.『ゆるゆり』シリーズ(なもり)

ジャンル:コメディ、ほのぼの

ゆるゆり』14巻より

推薦者:うりあ

 『ゆるゆり』シリーズは非常に有名であるが、もし未履修の新入生がいれば是非おススメしたい作品群である。本作品群はいわゆる「日常系」作品と認識されがちであるが、れっきとした「コミック百合姫」連載作品であり、ギャグ、日常描写を主体としながらも百合に対する真摯な描写がなされている。

 また、カップリングの数も非常に多く、その属性も同級生、先輩後輩、姉妹、幼馴染、教師生徒と多種多様であり、必ず自分好みのカップリングに出会うことができるだろう。現在、映画『大室家』が公開されているなど最もアツい百合作品である。

 

3.上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花(塀)

ジャンル:青春、しっとり、大学生

『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』1巻より

推薦者:占冠

 大学寮を舞台とした物語。京大生なら読むべし。

 

推薦者:うらん

 お酒を通じて少しずつ距離を縮めていく女と女の話。しっとりした空気感とおしゃれな絵、ポエミーな会話が作り出す世界観に、呑まれろ。

 教養の深い京大生には特に刺さりやすそう。

 

4.ぜんぶ壊して地獄で愛して(くわばらたもつ)

ジャンル:青春、デカダンス、インモラル

『ぜんぶ壊して地獄で愛して』1巻より         

推薦者:ミジンコ

 この作品で描かれるのは高校生二人の不道徳への耽溺である。優等生の吉沢が主人公であり、それと対置されるように直井という人物が配置されている。物語は静かに始まるが、次第にインモラルとデカダンスに向けて一気に加速していく。そのアクセルを踏むのは直井でもあり吉沢自身でもある。直井は吉沢を嚮導し、二人の関係性の中で主体的に振る舞う。しかし吉沢は直井に対しての客体であり続けてはいない。物語が進むにつれて吉沢は積極性を持つ、もしくは自らを変質させていく。吉沢は主体性へ向けて前進し、直井との関係性も変化する。吉沢と直井の退廃的な関係、しがらみから解き放たれて情念の解放に疾駆する二人の関係性に、我々は百合という言葉を手向けることができよう。
 この作品に「百合」を見出せる点は吉沢と直井の関係だけではない。吉沢を取り巻く周囲の桎梏にも「百合」を見出すことが出来る。吉沢の友人の下田、そしてはたまた吉沢の母親との関係においてもその言葉をあてはめられるだろう。
 吉沢はデカダンスへと加速していく。その中で振りほどかれていく関係、変質していく関係、新たに生み出されていく関係とそれらが生み出す衝動と情動に突き動かされる少女らを目にすることが出来る作品がこの作品である。

 

5.紡ぐ乙女と大正の月(ちうね)

ジャンル:ほのぼの、シリアス

『紡ぐ乙女と大正の月』3巻より

推薦者:まっつごー

 ちょうど完結したので。物語のクライマックスで関係性が完成される様は感動間違いなしの作品です。時間的な隔絶がより二人の想いを強くするのが良き。

 

6.総合タワーリシチ(あらた伊里)

ジャンル:ラブコメ、青春

『総合タワーリシチ』2巻より

推薦者:うらん

 ラブ‼️コメ‼️という感じのラブコメ作品。何が言いたいかというと、テンポよいコメディ要素の中にしっかり恋愛描写が存在しており、どちらの要素をとっても満足度の高い作品ということです。読めばわかるので読んでください。10年以上前の作品ですが、私自身先輩から布教されて現在激推ししているので、新入生にも受け継いでいってほしいです。

 

7.伊勢さんと志摩さん(トクヲツム)

ジャンル:コメディ、ほのぼの

『伊勢さんと志摩さん』1巻より

推薦者:いらしょなるなんばー 

百合オタク、百合は恋愛以外も含むが?みたいなこと言ってる人割といるけど実際どれ?
A. これ

8.恋より青く(深海紺)

ジャンル:三角関係、学園

『恋より青く』1巻より

推薦者:月海

通学路、電車の中、隣で笑う、違う制服の君──
「偶然」からはじまった二人の少女の歩み寄りを中心に描かれる、女子高生たちの淡い青春群像劇。
表題のとおり彼女たちが抱く恋より未熟で、でも透き通った「青い想い」に胸が締め付けられます。
現在2巻まで発売中(4月当時)。最新話はコミックOGYAAAにて読むことができます。

 

9.斜陽【前半】(太宰治

ジャンル:デカダンス

太宰治とはどんな人物?簡単に説明【完全版まとめ】 | 歴史上の人物.com

太宰治Wikipediaより引用)    

推薦者: 点々

 後半は百合ではない。しかし前半の1章、2章には流石太宰といった美しい文体で母娘の愛が描かれている。没落華族として2人で隠遁生活を送るこの母娘はどこか切ない雰囲気を纏う。これは恋愛では決してないが、その儚いような愛情の形はいつ見ても惚れ惚れするようで気がつくとその世界観に包みこまれてしまう。大正期デカダンスの大家、太宰治の描く母娘の関係性はそれだけで一読の価値があるだろう、しかし百合を目的に読むのなら後半は気を付けて読まなければならない。無論、作品としての評価は言うまでもない。

 

10.あの娘にキスと白百合を(缶乃)

ジャンル:学園、同居・同棲、 姉妹百合、 三角関係、 主従関係、 家族愛、 部活

『あの娘にキスと白百合を』8巻より

推薦者:猿渡白雪

 「ライバル」「幼馴染」「先輩後輩」「姉妹」「犬猿の仲」「三角関係」――。「女子高」を舞台に考えられる「百合」な関係性は全てここにある! 何組もの百合カップルの物語をオムニバス形式で描き、その1つ1つのカップルのストーリーが基本を押さえつつも目が離せないものになっている。それだけでなく、作品全体としても1つのコスモスとして美しくまとまっており、主人公カップルであり、もともとライバルという関係から始まった白峰あやかと黒沢ゆりねの2人の行きつく着地点は非常に秀逸で感嘆せずにはいられない。

 百合好き初心者にぜひとも手に取っていただきたい、2010年代前半を代表する百合漫画界の名作。この作品を基に自分がどんな「関係性」に惹かれるのかを知り、百合好きとして自分の「好き」に出会う最初の一歩を踏み出してみませんか?

推薦者:はたはた

 様々な形の百合が登場するので、百合初心者が自分の好きな百合を探すのに最適と考える。

 

 

オタクたちの推薦が止まる気配が無いので、今回はここまで!Part2で引き続き紹介します!それでは!

【布教企画】「私達の選んだ1コマ」大賞2023 下

それぞれの会員の「私の選んだ1コマ」2023

前回の続きです。早速本編行きましょう。①は以下のリンクから。

ku-yuribunken.hatenablog.com

 

 

白雪の選んだ1コマ:「エクストリーム帰寮」

カーディナル会長のX(旧twitter)より。

 京都大学自治寮・熊野寮では毎年12月、熊野寮祭というものが開催されます。その中で寮から自動車で1時間ほどのところに連れていかれ、必要最低限の持ち物の所持のみで歩いて帰寮するという「エクストリーム帰寮」というイベントがあります。

 今年、会長以下百合文化研究会の1回生の多くはこのイベントに参加していたのですが、私が選んだのはそのイベントにおけるカーディナル会長のツイートです。そう、会長は30時間くらい歩いて帰らないといけないのに、このイベントに10冊以上も百合漫画を持ち込んでいたのです! いや、絶対に重いし、他に持っていくべきものあるでしょ、それ。

 それだけでなく、彼は30時間の道のりで持参した百合漫画をレビューしながら京都大学まで帰ってきたのです! これが百合文研会員の、そして百合文研会長の鑑……(多分違う)。

カーディナル会長のX(旧twitter)より。野外で実質R18百合を読むのはまさに、百合文研会員の鑑。

 そんなネタとしてのコンセプトも面白いこの1コマなのですが、それ以上に創設当初からこのサークルに参加してきた私はこの1コマにネタ的な面白さだけでなく、ある種の感動も覚えました。

 実はこの1コマ、カーディナル君が会長に就任して1週間ほど経ったタイミングでされたツイートで、時期もあり、私の目には百合文研の世代交代・新しい時代を感じさせる1コマのように映ったのです!

 今年は、毎年一人ずつくらいしか1回生が入らなかった弊サークルとしては異例なほど、しかも積極的な1回生がたくさん入り、Liliology vol.3の「百合姫20年分全部読む」など、これまでだと絶対にできなかったような企画をはじめとして百合文研に新しい風を吹き込んでくれました。そんな百合文研の新しい時代を感じさせる1コマとして、このコマを選びました。

 

 

ミジンコの選んだ1コマ:『ブルーアーカイブ

「ブルーアーカイブ」 メインストーリーvol.3「エデン条約編」 三章「ポストモーテム3」より。

 「ブルーアーカイブ」 メインストーリーvol.3「エデン条約編」 三章「ポストモーテム3」より。

 桐藤ナギサと聖園ミカ、幼馴染だった二人の関係性の変化を活写した一幕です。お互いにどんな気持ちを抱いているかとかこれからの関係はどうなるのかといったことを考えて脳を焼かれてしまいました。「幼馴染」という関係の重み、いいですよね……。

 

 

月海の選んだ1コマ:『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』

ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』より、8月度Fes×LIVEの一幕。

 「いま」を描く青春学園ドラマ『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』より、8月度Fes×LIVEの一幕。

 「蓮ノ空」の他ユニットが4月には結成されていたのに対して、7月に大沢瑠璃乃さんが加入、8月に藤島慈さんが休部から復帰しユニット結成、と遅咲きのユニット『みらくらぱーく!』。

 そんな彼女たちだが、メインストーリーに当たる『活動記録』9、10話で描かれた「幼馴染み」という間柄な二人の互いに向ける想いの交錯や葛藤、その上でユニット結成に至るまでの物語は圧巻という他なかった。

 

 さて、今回1コマに選んだのは、そうしてみらくらぱーく!が結成した直後のFes× LIVEで披露された『ド!ド!ド!』のラスサビ前の1シーンである。数年の月日を経て再び隣同士に立つこととなった二人の、互いに向けた満面の笑みに、視聴当時わたしは思わず感極まってしまった。

 また、パフォーマンス披露後のMCパートで語られた「『ド!ド!ド!』は再会するより1年も前に慈さんが作詞した楽曲である」という事実を踏まえてみると、この1コマはより味わい深く感じられることだろう。

 

 以上、蓮ノ空のこと好き好きクラブの一員からでした!

 

 

o.obscuraの選んだ1コマ:『アサルトリリィLast Bullet』

『アサルトリリィ Last Bullet』より

 本コンテンツはメディアミックス作品『アサルトリリィ』のゲームです。2023年のアサルトリリィは新たにノベルが発売されたり、舞台の公演や(リサナウト、女狐、etc)、ラスバレでは新メンバーの活躍など、引き続き盛り上がりを見せておりました。

 

 アサルトリリィの物語上の特徴としては、「世紀末」的な世界における命を懸けた戦いの中での女性同士の関係性の描写が中心となっている点でしょう。特筆すべきは百合ヶ丘女学院における「シュッツエンゲル制度」であり、上級生が特定の下級生の守護天使となって導く、という疑似姉妹のことです。ラスバレやアニメ「Bouquet」の主人公、一柳璃梨と白井夢結の「ゆゆりり」が代表例です。普段は姉妹以上の二人として共に過ごし、戦地ではお互いに背中を預ける唯一無二の関係性には尊いものがあります。  

 

 しかしながら、「教えて二水ちゃん」を含むさまざまな媒体で関係性が強く示唆されていながらも、シュッツエンゲルの契りを交わしていない上級生と下級生のカップリング(通称「早契島」)の存在は社会問題となっていました。その一つであった吉村・Thi・梅と安藤鶴紗の二人が2023年、ついにシュッツエンゲルの契りを交わしたのです!! 

 あまりの歓喜にスクショを何枚も撮ってしまいました。まず1コマ目はこちらの「たづまい」になります。

 

 

o.obscuraの選んだ1コマ:『BanG Dream It's MyGO!!!!』

『Bang Dream It's My GO!!!!!』最終話より

 続いて、『BanG Dream It's MyGO!!!!』から1シーンです。

 本作品は、これまでのBanG Dreamシリーズではあまり強調されなかった、バンドメンバーを中心とした登場人物間のギスギスした感情のぶつけ合いやすれ違いが頻繁に見られる点が特徴的です。開幕早々のバンド解散、主人公・燈の「一生バンドやろう」宣言、春日影ショック……、彼女らのすれ違いにより2023年最も百合オタクを悩ませたアニメでもありました(私見)。

 

 そんな『BanG Dream It's MyGO!!!!』からの1コマは、豊川祥子の「残りの人生、私に下さいませんか」という台詞です。この台詞だけでも百合っぽいのですが、実は彼女は主人公である燈がバンドを始めるきっかけとなったのに、燈たちを半ば突き放すような形でバンドを辞めて解散させてしまったのです。物語内の回想に出てくる祥子は燈の正ヒロインそのものであり、どうして冒頭のような悲劇が起こったのか、実は真相は謎に包まれており続編に期待であります。また、冒頭のバンド解散がなければMyGOは結成されなかったでしょうし、ある意味でMyGOは「祥子が始めた物語」です。

 

 さて、「残りの人生、私に下さいませんか」は、そんな祥子が新たに結成した「Ave Mujica」のメンバーを集める時に言ったセリフなのです。お気づきになりましたでしょうか……? そうです、燈がMyGOメンバーに発言した「一生バンドやろう」と対を為すセリフなのです。これは燈のヒロインであった祥子が、燈たちと決別して別のバンドを結成し、別の物語を始める象徴的なシーンでした。MyGOと対を為すヴィランとして(?)のAve Mujicaの歴史は、ここから始まったのです……。

 

 

まっつごーの選んだ1コマ:『スロウスタート

 

まんがタイムきらら』2024年1月号より

 圧倒的なインパクト。彼女は一体なぜこんな顔を……?

 

 『スロウスタート』はひょんなきっかけで高校浪人してしまった主人公・一之瀬花名があたたかい人間関係に囲まれながら日常を送り、少しずつではありますが人間的に成長していく物語です。今年で連載開始から十年、ですが作中の時間は一年目の冬……名実ともに「スロウ」な作品です。

 この世の終わりのような顔をしているのは花名の友達の百地たまて。入学式の日、慣れない高校生活に物怖じしていた花名に初めて声を掛けたかけがえのない友達です。おてんばな性格で花名の不安を吹き飛ばしてくれるような明るい子。

 そんな明るい彼女ですが、一人の転校生の登場で関係性は変化してしまいます。億果実……花名と「同い年」の高校二年生。彼女は親の都合で転校が多く、学校で本当の「友達」を作った経験がほとんどなく友達を半分諦めかけていました。しかし彼女は中学生のころちょっとしたきっかけで花名に助けられた経験がありました。感動の再会に、花名と果実の距離はどんどん縮まっていきます。二人しか知らないエピソードで盛り上がって笑いあう二人。そこにたまてが出くわします。

 関係性の変化、友達に新しい友達ができた……これは嫉妬なのです。普段は明るいたまてが花名を取られてしまった嫉妬に燃える表情は、関係性の変化を鮮烈に表現しています。

 

 

簡単なまとめ

 以上、9人の会員による、アニメ・MV・ソシャゲ・漫画twitterという実に多様なメディアから選ばれた11コマの紹介でした。

 そして今年も企画のまとめとして投票を行い、

 

 名誉会長のレニさんの推薦した『お嬢様と巨人』の1コマ

 

が、2023年版の、百合文研としての「私達で選んだ1コマ」ということになりました。今回選ばれたコマは来年度の百合文化研究会の活動にひょっとしたら再び顔を出すかもしれないので、皆さんも気にしてみてくださいね。

 

 ですが、去年も同じこと言ってた気がしますが、この企画はあくまで

『きもちわるいから君がすき』6話より

 「最強」という漠然とした争点の中でオリジナリティを競い、シェアするイベントだと思っています。

 今回紹介された11コマ、そのどれもに消費者を魅了する「熱」が詰まっていて、発表者一人一人にはその一コマに出会った時の『物語』がある。

 そんな会員たちのオリジナリティ溢れる『百合と過ごした2023年』の物語を、少しでも面白いと感じていただけたら幸いです。

 

 そして最後の最後に、最初の問いに戻ります。

 あなたの百合オタクライフにとって、2023年とはどんな年でしたか? 

 この記事が読者の皆さんも「百合と過ごしたご自身の物語」を振り返るきっかけになったり、2024年の新しい百合と出会う物語を始めるきっかけとなりましたら幸いです。

【布教企画】「私達の選んだ1コマ」大賞2023 上

(編集責任:まっつごー・湖柳小凪)

 

  あなたの百合オタクライフにとって、2023年とはどんな年でしたか? 

 

 ごきげんよう。湖柳小凪です。

 弊サークルが設立以来開催している年末恒例企画「私達の選んだ1コマ」大賞も今年で3回目を迎えました。この記事はそんな「私達の選んだ1コマ」大賞2023の模様をお伝えするレポになります。

 会員一人一人が選んだ強すぎる「1コマ」の数々。これを見て、皆さんも2023年の百合ライフを振り返りませんか。

 

「私達の選んだ1コマ」大賞とは?

 本編に入る前にまず今回の概要について簡単にご説明しましょう。この企画はずばり、会員が2023年に触れた百合作品のうち、特に印象に残った「1コマ」を選んでプレゼンし、その中からサークルとして最も2023年で「強かった」1コマを選出する、というもの。

 1コマといっても、媒体は漫画に限らず、百合作品の一部ならそのメディアはアニメでも小説でも良い、として会員から「私の選んだ1コマ」を募りました。今年はソシャゲの1コマや楽曲のMVからの1コマも集まり、去年、一昨年以上に多様性に富んだ応募となりました。

 

それぞれの会員の「私の選んだ1コマ」2023

 さて、能書きはこれくらいにしてそれぞれの会員に熱い推しコマ・推しシーンを語ってもらいましょう。

 

cardinalの選んだ「1コマ」:『この百合はフィクションです』

『この百合はフィクションです』第1巻より

 群雄割拠のアイドル戦国時代、売れるためにアイドルたちは様々な戦略を執ってきた......。その中でも特に効果的な戦術......「百合営業」ッ!!!

 

 アイドルグループ「ぱらいそ伝説」の可愛い天然妹担当・直江めぐむとクールビューティ担当・伊達沙愛良は性格は反対だけど仲が良くて相性のいい仲良し「だてなお」コンビ......というのは表の顔!実際の直江めぐむは計算高い超・現実主義であり、彼女の計画した「百合営業」に気弱な伊達が無理やり付き合わされていただけなのであった...!

 

 1コマの場面は百合営業と直江のパワハラに我慢の限界を迎えた伊達がなんとかして「だてなお」の幻想を破壊しようと直江に無断で生配信で露骨な不仲アピールをした後のシーン。伊達の計算では不仲アピールによって「だてなお」ファンが幻滅するはずだったのだが、悲しきかな、オタクたちは都合良く伊達の不仲アピールを百合的方向に解釈してしまう。伊達の百合営業破壊は失敗に終わったのだった......。

 

 『この百合』はキレの良いワードセンスが特長の作品。その中でも特に面白く、伊達のオタクへの憎悪が良くわかるこのコマを選出させていただきました。

 

 

点々の選んだ1コマ:『不器用ビンボーダンス』

なをををををを氏『不器用ビンボーダンス』1658話より

 「不器ビン」にはガチガチの百合カップルが登場するため、この二人のお話はギャグパートだと思って油断していました。いきなり刺されて死にました。普段軽く冗談を言い合うような間柄の人たちがたまに見せる大きめの矢印、いいよね......。

 

 

レニの選んだ「1コマ」:『お姉さまと巨人』

 レニの選んだ「2023年1番強かった1コマ」は……

『マリアさまがみてる』(2004年,スタジオディーン)

 

ではなく!

Be-con『お姉さまと巨人』(KADOKAWA)

【本作のあらすじ】

 主人公・雛子(小さい方)が異世界転生し、姉妹の契りを交わした巨人のエイリス(大きい方)と、現実世界で生き分かれた「お姉さま」を探す、というストーリーの異世界転生ファンタジー

 作者もあとがきで明言しているように映画『アウトレイジビヨンド』に強く影響を受けており、主要人物の相関図も完全に一致してます。

相関図

【状況説明】

 それと同時に、この作品は「マナーを守ること」の意味についても説かれてきました。マナーを守ることで、どんな相手とも対等に渡り合うことができる。

その冒険の末、そしてこれまで描かれてきた「マナーを守ること」の意味が結実したといえるのが、今回選んだ1コマ。

 

 ではなぜ、どんな相手とも対等に渡り合わねばならないのでしょうか?

それは……「私より大きなものと戦う」ため。

 

 つまりこの作品はいわば、現代の百合文化の基礎を築いた『マリアさまがみてる』以来の百合的なお約束も踏まえながら、映画『アウトレイジビヨンド』にも通じるような関係性の入り乱れた愛憎劇を、『進撃の巨人』のような胸躍る本格ファンタジーの中に内包して生まれた、奇跡のような作品なのです。

 そのような正統派百合の進化系の最前線を、2023年で私が選んだ1コマとさせてもらいました。

 

 

小凪の選んだ1コマ:『ポラリスは消えない』

嶋水えけ『ポラリスは消えない』(2023年、スクエアエニックス)

【あらすじ】

 2年前に死んだアイドル(推し)を神様のように信奉する主人公・橘ミズウミが、彼女の死後忘れられゆく推しを永遠のものとするために、自分がそのアイドルになりすまして配信活動、路上ライブetc.を始める。そんな歪みながらも純真すぎる彼女の信仰は、ミズウミを商売に利用しようとする悪い大人、よく思わないアイドルグループの元メンバーを巻き込んで話が進んでいく……というお話。

 これまで恋愛という関係に比べて一言で説明がついてしまうのであまり百合と思っていなかった「推し」「推す側」という関係性の尊さを中心に据え、「推し」百合に対する小凪の見方を180度転換させた1作。

 

【相関図】

 ソラ(推されるアイドル)は死んでいるため、1巻2巻とかけて、ミズウミ(ファン)からソラに対するクソデカ矢印が描かれていく。そして迎えた3巻。回想シーンで遂に明かされたソラからミズウミに対する思い。私が選んだのは、そんな1コマです。

 

【状況説明】

 ソラとミズウミは子供の頃に同じ時期に入院しており、友情を育んでいました。しかしミズウミの方が早く退院することが決まってしまい、お互いがお互いなしでは生きられないと思っていた二人は夜にこっそり二人で「退院」してしまいます。

 そんな逃避行で見上げた、歴史上道標となっていた不動の星、こぐま座ポラリス。そんな道標になろう、と二人で誓い合った、そんなシーンから持ってきたのがこの1コマです。

嶋水えけ『ポラリスは消えない』(2023年、スクエアエニックス)

【解説と推薦理由】
このコマには3つのポイントがあります。

 

①ソラにとって自分を照らしてくれるミズウミの存在こそ道標。そんなミズウミにとって自分も道標に、照らしてあげるような存在になる、「推される存在」になろうと決意した瞬間。この作品が正真正銘の「推し」百合に、双方向百合になった瞬間。

② 推し=アイドル=人々が歩く道標=ポラリス。 美しすぎるタイトル回収。ポラリスは消えない」=道標は死後も消えない。

③「推し」というこの作品のテーマが何なのか、その二文字にどれだけ大きくて、複雑な感情が詰まっているかを推される側から、鮮やかな比喩で端的に言い表している!

 

 つまり、「推し」との関係性を描く百合に、どれだけ尊い関係を込められ、どれだけ面白いドラマを込められるかを表した1コマなのです。

 「推し」百合のニュースタンダード、そんな1コマを2023年に出会った最も印象深い1コマとして選ばせていただきました。

 

 

うりあの選んだ1コマ:『潮が舞い子が舞い』

阿部共実先生『潮が舞い子が舞い』最終話より


 今年は阿部共実先生の漫画『潮が舞い子が舞い』より、百々瀬(百々瀬奏)とバーグマン(真鈴バーグマン)の関係性についてプレゼンさせていただきました。

 

 初めに『潮が舞い子が舞い』という作品について簡単に紹介させていただくと、神戸市垂水区の舞子を舞台に、高校2年の少年少女たちの日常を描いた作品です。今年完結してしまったのが非常に残念です……。本作が百合作品として語られることはほとんどありませんが、本作は関係性を描いた群像劇的な物語であって、その中で百合的関係性を見出すことができます。そこで、今回は百々瀬とバーグマンの関係性について取り上げました。

 

 バーグマンは、世の中の基本的な構造から概念まであらゆることに疑問を持って考える、といった少し変わった少女で、食堂で初めて百々瀬と絡んでから、しばしばその疑問などを百々瀬に問いかけるようになります。百々瀬は、基本的にクールで大人びた(百々瀬の性格、内面に関しては議論の余地がありますが、ここではこのように表現します。)性格ですが、面倒見が良く、バーグマンの主張の聞き役となっていき、行動も共にするようになります。

 二人が絡み始めてから最終話に至るまで、基本的にはバーグマンが、百々瀬と幼馴染みの少年・水木に嫉妬したり、自分は百々瀬から十分すぎるほどに与えてもらっているのに自分から百々瀬に何も与えられてないのではないかと悩んだり、バーグマンから百々瀬に対する特大やじるしが見受けられます。

 

 さて、そこで今回の1コマ大賞に選出した画像の百々瀬のセリフ

「私は何があっても 真鈴とずっと友達でいたいと思っている」

です。

 

 最終話、二人が授業を抜け出して海辺に行き、未来について語り合う中の1コマです。これまで百々瀬の方からは、バーグマンに対して明確に思いを伝えるシーンはほとんどなく、このシーンで始めて思いを告白したと考えることができます。この百々瀬のセリフの真意に関しては色々考察することができますが、阿部共実作品解釈論(?)的には、同作者の作品『月曜日の友達』で「友達」という言葉が重大な意味を持って用いられていることを考慮して、バーグマンに対する最上級の感情表現であると考えることができます。その一方で、単純に文理解釈を行えば、あくまでバーグマンはかけがえのない「友達」であって、一般的に「友達」より一歩進んでいるとされる「恋人」といった関係性になることはないことを暗に示唆しているとも考えることができるのではないでしょうか。しかし、この百々瀬のセリフは、“何があっても”、“ずっと”という単語からも、ペシミズムではないと言いつつ未来に対して悲観的になってしまうバーグマンの希望の光となったことは間違いないでしょう。あと、百々瀬の瞳にはバーグマンが映っていて、表情は見えませんが容易に想像できてしまいますよね。

 

 最後になりましたが、百々瀬とバーグマンの関係性を考える上でこの1コマは重要なんですが、この1コマ、ひいては最終話のみで二人の関係性を語ることはできないので、興味を持ってくださった方は是非『潮が舞い子が舞い』を読んでください!

 

 

 

休憩!

 と、ここまで前半戦は漫画から選ばれた1コマについてまとめていきました。

 しかし、今回は漫画から選んだ会員だけでなく他にも多様なメディアから1コマを選んだ会員がいました。後半ではそんな「その他」編を中心にご紹介します。良かったら後半も読んでみてくださいね。

 

 

【徹底調査】大室撫子さんの彼女は誰?私なりに調べてみました!【大室家】

(書いた人:Cardinal)

 

最近『大室家』がネットを騒がせていますね!現在(12月18日)『大室家×アトレ秋葉原』のコラボが実施されており、大盛況🙌を見せています。さらには2024年2月には『大室家』の🎥映画🎞️が公開予定❗❗筆者は今から映画館で見るのが待ちきれません😁👍👍。

ゆるゆり(以下本編)の登場人物、次女の大室櫻子を中心に、姉の撫子、妹の花子の3姉妹から成る本編のスピンオフ漫画である。当初ニコニコ静画で無料連載され、その後ニコニコ百合姫に連載場所が移った。なお、百合姫での新web誌であるゆりひめ@ピクシブの設立に伴いニコニコ百合姫が2016年12月号をもって最終号となったため一時的に休載となっていたが、そのゆりひめ@ピクシブにて2017年8月から連載が再開されたが、新規エピソードが掲載されたのは50話・51話・52話の三つだけで、その後は雑誌のコミック百合姫にてゆるゆりと共に連載されている。

(『大室家』とは?|pixiv百科事典より引用)

そんな大室家ですが、メインキャラクターの一人である「大室撫子」さんに彼女💕がいる(❗❓)という噂があることを皆さんはご存じでしょうか🤔?

『大室家』第6巻より

『大室家』が存在する「ゆるゆり」時空では文字通り「ゆるい百合」が主であり、なかなか本格的な恋愛関係にまで発展した百合を観測することは難しい現状・・・。そんな中交際にまで発展しているお相手がいる撫子さんの存在は要注目です👀。

 

いったい撫子さんの交際のお相手は誰なんでしょうか???

 

という訳で今回は皆さんが気になっている大室撫子さんの交際相手を調べてみました

 

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『大室家』第6巻より

1.待って!そもそも大室撫子ってどんな人?

『大室家』のメインキャラの一人である大室撫子さん。意外にどんな人なのか知らないという人も多いのではないでしょうか🤔。

 

大室撫子さんは1月21日生まれの18歳

 

大室家の三姉妹の長女です。

 

身長は165cm、血液型はB型、好きな飲み物はアセロラで、苦手な科目は音楽らしいです(ちなみに筆者は高校時代は数学が苦手でした!同じ人は沢山いるのでは❓)。


性格はクール🥶でミステリアス😶‍🌫️。家ではよく妹たちの面倒をみたり喧嘩を仲裁しているしっかりしたお姉ちゃんとのこと。クールですが優しい🥹一面もあるみたいですね❗


 自分をあまり見せないため長らく趣味は不明😶‍🌫️のままでしたが、どうやらオンラインゲーム👾🖥️が趣味であるということが最近判明しました。意外な趣味ですね😯!

2.いよいよ真相へ!交際相手の候補は??

 

そんな撫子さんも学校では💃🤟👯‍♀️イケイケ🤸‍♀️💫🫰の女子高生🧋。そしてどうやら撫子さんの交際相手は彼女の同級生の中に居るらしいのです!一体誰なのでしょう?今回は撫子さんと特に親密な3人の人物について調査してみました。

 

容疑者1:三輪 藍

おっとりした表情とロングヘアが特徴の穏やかで優しい🥰高校生。好きな飲み物はカフェオレ☕、苦手な科目は地理🗺️らしいです(わかる!)。

 

 普段の撫子さんとの付き合い方を見ているかぎり普通の友だちみたいですが・・・実は一回だけ撫子が彼女に壁🧱ドンしたのを目撃👀されているそうです!

『大室家』第3巻より

これは彼女の可能性が高そうですね・・・。今後の動向が気になるところです❗

容疑者2:八重野 美穂

いつもカチューシャを付けている可愛らしい😻女子高生。好きな飲み物はグレープフルーツジュース🍹、苦手科目は体育🏃‍♀️。可愛い見た目ゆるふわな言動に反して意外と性格はドSであり、しょっちゅう友だちをからかっているらしいです。


攻めっ気のある彼女は撫子に対しても距離が近くなることが多く、撫子も毎度まんざらでもない表情😏をしていることから美穂が撫子の彼女😘である可能性は十分にあります。

 

『大室家』第3巻より

可愛さあざとさでクール😑な撫子を篭絡した・・・ということでしょうか❗❓

容疑者3:園川 めぐみ

明るい😀性格の女子高生。撫子たち4人の中ではいじられキャラらしいです😅。好きな飲み物は紅茶🫖、苦手な科目は英語🆎。またケーキ屋さんでアルバイトをしており、撫子たちも彼女のバイト先に遊びに来たことがあるそうです。実は将来の夢も🧁ケーキ屋さん🍰だとか・・・。

 

 

 一見撫子と付き合っているような様子は無いように見えますが・・・、実はさりげないところで撫子がめぐみを気遣う場面がちょくちょく見受けられます

 

『大室家』第6巻より

こうした日々の小さなやさしさ🫶の積み重ねが実🍎を結んだ・・・ということもあり得るのではないでしょうか!?ノーマークに見えて実は一番可能性があるのかもしれませんね🤩!

3.結局大室撫子さんの彼女は誰???

結論から言うと、現在大室撫子さんの彼女が誰なのかはわかりません・・・😔。

 

上で挙げた同級生たち以外にも、撫子さんの趣味であるオンラインゲームで知り合った女子中学生など撫子さんと親密な関係にいる人は多くいるため1人に特定できないのが現状です。

 

今後の展開次第で明らかになるかもしれませんね😉。今後の大室撫子さんの活躍に目が離せません❗

 

4.おわりに

いかがでしたか?この記事が役に立ったと思った人はぜひX(旧Twitter)やTruth SocialなどのSNSでの共有京都大学百合文化研究会の公式Xのフォローをお願いします!

それでは皆さん、良い百合ライフを!

11月祭従軍記

(書いた人:ミジンコ)

 

京大構内をある亡霊が彷徨っている──十一月祭の亡霊が。

 

かの十一月祭はもはや3週間前のことである。京大からは魔術的なきらめきと美が失われてしまい、今や講義に出たり出なかったりする学生達が構内を徘徊していたりしていなかったりするのみである。
 しかしその時、そう11月22日から25日の間の十一月祭、その最中に、無機質な大学のキャンパスの一角に、一輪の百合の花が咲いていた。
 そう、卍 † 京都大学百合文化研究会 † 卍、である。今回は11月祭における京大百合文研の活動を振り返らせていただく。お付き合いいただければ幸いである。

 

NF前日(11/21)

 

「待つ間が花」、という言葉があるように、大抵のことは待っている間が一番楽しかったりするものである。個人的には前日も同じくらい楽しかったのだが、まあ始まる前の高揚感というかワクワクとした緊張を持っていられるのはその日までだったので、まあそこらへんのバフが乗っているのだろう。知らんけど。
 前日というのは忙しいもので、講義に出たり出なかったりして、その合間で作業をおてつだいしたりした。空きコマを利用し、ビラを貼りに吉田南構内を弊会の同志らと徘徊していたのだが、もうその時点から既に各サークルなどなどによるビラ貼り戦争が始まっていた。ホッブズ「万人の万人に対する闘争」のフレーズを思い起こすような掲示板であった。昔のイベントの告知などの古いビラの上や、比較的占有されていないスペースの上にスクラムのように弊会のビラを貼った。バラバラに貼るよりも集中的にコロニーを形成する方が効果的である。集団戦法だ。これがおじさんのファランクスだよ。

百合ファランクスの図

そしてビラ貼りの後に私は5限へ。そこでこの後の肉体労働のための英気を養い、終了直後には喜び勇んで集合場所へと自転車で電撃的に前進。私にとってのNFはこの時に幕を開けたのである。しばらく講義に出なくてよくなったので。
 ということでNF0日目、「設営」がやってきた。最も重要にして最も大変な労苦である。何をなすべきか?答えは簡単だ。肉体労働、その一言に尽きる。会員を動員し、まずは運搬を行う。大量の百合姫と漫画をリュックに入れたり手に持ったりして人海戦術で運ばなければならない。すごい量なので一回ですごい量を持って行っても結局はすごい回数漫画の集積地と会場の教室を往復することになった。
 運搬が終われば次は設営とビラ貼りである。ビラ貼りって二百枚以上やるねん。
 一方会場では設営が行われていた。百合姫や会員が持ち寄った漫画を並べ並べ並べ、壁にタペストリーを飾り、ポップを作成し、聖地巡礼の写真を貼りなど多岐に渡る労働に従事した。ある会員は某作品のコミカライズや小説版に加えアクスタなども用意しており祭壇を完成させていた。素晴らしい熱意!
 そのようにいろいろやっているうちになんともう22時。よいこはおうちにかえるじかんである。泊まり込む決死守備隊(総勢二名)を残し撤退せざるを得なくなった。設営の残りや会場の死守を彼らに任せ、明日に迫ったNF開幕を前に設営が完了しない事実に後ろ髪を引かれるような気分を抱えつつも、今日のところはひとまず各々は自らのねぐらへと帰っていくのであった。帰ろう、帰ればまた来られるから。

 

NF一日目(11/22)

NF初日!

 そしてNF開幕当日を迎えた。朝から設営の続きの手伝いのために会場に向かうとその黒板には百合文研お絵描き班による珠玉のまどほむが!!

 



 NF全体を通じてこのまどほむの威力は絶大だったようである。嬉しい。まあ私は一切関われていないのだが……

 会場では朝から開幕の10時に向けてあくせくと準備をした。物資集積地から漫画を持ってきたりレイアウトを整えたり壁に写真等を貼ったり……そしてあらかた準備が終わり、いよいよ開幕を迎えてしまった。朝の10時のことである。どこかから鯨波が聞こえてくる。教室は静かだった。こうして百合文化研究会の十一月祭は静謐の中で幕を開けたのだ。

 私はシフトではなかったのだが、初めて体験するNFなるものに惹かれてなんとなくしばらく会場に佇んでいた。しかし世間的には平日であり、開幕して一番最初にこのサークルに来る人もあまりおらず、10時をわずかに回ったばかりの時間帯では教室の中に音楽が流れるのみで、話に聞くNFの喧騒なるものはまだこの共北31にやってきていなかった。翌日やってきたが。

 

NF2日目(11/23)


何をしていたか記憶にございません。個人的に友人らとNFを見て回ったりちょっとだけ百合文研に顔を出したというぐらいである。といってもフリースペースで「安達としまむら」か何かを拝読させていただいていたぐらいかもしれない。ついでに少しばかり売り子を手伝ったりしたのではなかったか。今のところそんな気がしている。真相は闇の中である。
 この日は山百合会(百合文研OBOG会)の会員の方が督戦においでになった。会誌販売スペースでは売り子としてばっさばっさと会誌を売りさばき、解説役に回ればその知識量で教室を周回し解説を披露するなど八面六臂の大活躍をなさっていた。
月並みだが私も奮闘せねばならないと思った。漫画を読みながらであったが……。(シフトではない時間帯のことなので許してほしい)
 そして二日目終了後(要出典)、督戦隊は明日をめがけて遠く関東へ帰投していった。帽振れー!

 

NF3日目(11/24)

そして私にも勤労動員の時間がやってきた。午前中は英気を養い(寝ていたという訳ではない)、午後からは会場に赴いて労働に従事した。売り子をしていたと思う。売り子以外も少し何かした気がする。自然発生的に生まれた区別だったが、解説委員は会場で作品や展示の解説をして、売り子は会誌販売の対応をするという分業体制が確立されていた。つまりいらっしゃった方々と話をするのは主に解説委員の仕事となっていたわけだが、売り子もコミュニケーションをしないわけではなかった。お金を受け取って会誌などをお渡ししてそれで終わり、ではなかった。道案内もした。質問にもお答えした。普通に百合の話もした。おすすめの百合の話もできる。というかした。しかし今になって思い返してみるとあまり面白いこと言えなかったな、とかあの作品を挙げ忘れたな、とかいろいろ反省点ばかりが見出される。私には百合の知識も教養もまだまだ足りないのである。そう実感し、百合なるものの奥深さを思い知らされたような気分になった。これが三日目のことである。

 

NF4日目(11/25)


最終日にして土曜日である。この日も私は売り子をしていたりしていなかったりした。四日目の部分ともなるともはや特段書くこともあまりない。申し訳ない。四日目は大体二日目と似たような一日になった。督戦隊(二日目にも来ていたOBOG会の方)が再び京都に現れてまたも我々と肩を並べておられた。この日も大活躍であった。当日配布した「共通テスト 百合文化(きらら学)」もその方が作られたものである。私もオタクとしてかくありたい。

 

総括


非常に曖昧模糊とした小学生レベルの感想で恐縮だが、NFはとても楽しいものであった。様々な百合を読んだり読んでいただいたり、多くの方々と交流させていただいたり、会誌や会場での展示等の感想などをインターネットで目にするたびに、このNFに向けた二ヶ月近くに渡る艱難辛苦が報われたような思いを抱いた。
 NFを通じて多くの方に弊会のところに足を運んでいただけた。今回のNFにおける展示や作品の紹介などを通じ、おいでになられた皆様が百合文化について造詣を深められたり、百合について興味を持たれたり、様々に楽しんでいただけたのであれば万々歳である。皆様にもこれからも素晴らしい「百合」との出会いが訪れますように祈っております。

 

 

それでは皆様、ごきげんよう

 

 

・その他会員のコメント

【小凪】ファッ?200枚もビラ貼ったの?お疲れ様です……。

【うらん】私が気まぐれで書いた「会員におすすめの百合を聞いてみよう!」のおかげで、会員が突然推し作品を紹介させられる場面が散見されましたね。私は1度も聞かれませんでしたが。

【点々】我々が想像する以上の全面的で徹底的な文化祭でしたね、自分は中々お手伝いできなかったけれど、お疲れ様でした。

【Cardinal】カイチョーは前日の夜ずっと作業してたせいでNF開催とほぼ同時に家で爆睡し、起きたら1日目終わってました(;ω;)準備は、計画的に、しよう!

【まっつごー】NFレポの発案者です。執筆はミジンコにお願いしたら予想通り彼らしい文体、言葉選びの面白いブログができて嬉しい。

【1/30重要な追記あり】【23'冬アニメ座談会】「百合」アニメの境界線に関する一考察 -『お兄ちゃんはおしまい!』は百合か論争(TS論争)を題材にして-

 

【レニ】  今回の論争ってTS百合に懐疑的なのが月海(Tsukiumi)さん、TS百合肯定派が白雪さん(Shirayuki)さん、なんですよね。

【白雪】これがほんとのTS論争……。

『お兄ちゃんはおしまい!』アニメキービジュアルより

 

 

(書いた人:猿渡白雪)

 

 

【1/30追記】

記事公開後、様々な反応をいただきました。当記事の論旨、および当記事の発言におけるジェンダーセクシュアリティ観の2点につきまして、補足と謝罪をいたします。

 

第一に、本記事の論旨は「はじめに」に記載したように、「人が『百合である』と認識する/しない境界線」について、『お兄ちゃんはおしまい!』という作品の異なる読解を対象として、白雪が考察を試みた、というものです。決して、「当該作品は文字通りの意味で、「女性同士の関係性」を描く、『百合』作品である」「『TS』ジャンルは『百合』ジャンルに含まれるべきである」等の主張を行うものではなく、またサークルとしてそのような主張を行っている意図もありませんでした。

「おにまいは百合である」派として登場する白雪自身の立場としても、ブログ後半で「素直に見たら「おにまい」は百合ではないと思っている」と語っているように、「文字通りに読解したら『百合』ではないものを、想像力を働かせることで、あえて異なる読解を行って読み替えることができるのではないか」というものであり、先述のような主張を行う意図はありませんでした。

しかし本記事では、これらの前提が、ブログ執筆時に自明のものとしていたが故に抜け落ちており、加えて「論争」というセンセーショナルな言葉を使うことによって、結果的に「百合」ジャンル全体の話として、対立を煽るような形となってしまっておりました。ここに謝罪申しあげます。

 

第二に、本記事における会員のジェンダーセクシュアリティに関する発言につきまして、様々なご指摘を頂きました。当該の白雪の発言では、「男性」「男性性」と言う言葉を、性別を表す一般的な用法ではなく、白雪個人が百合の主人公として認識できない「属性」として、作品読解のために恣意的に用いておりました。その結果、「性自認」に関する的を外れた発言や、「社会的に望ましいとされる男性性を有していなければ男性ではない/女性である」ともとれる論理の飛躍した発言などが記載されておりました。

しかし、こうしたジェンダーセクシュアリティ観は明らかに誤謬であり、不適切なものです。このようなジェンダーセクシュアリティについての表現が用いられたこと、およびその場の誰からも指摘がなかったことに関しまして、深く反省しております。改めて謝罪申し上げます。

 

白雪・O.obscura・月海・レニ

 

(*1.でグダグダ書いてますが、要は「おにまい! 」は百合かどうか論争をブログ記事にしたものです。軽い気持ちで楽しんでいただければ執筆者冥利に尽きます。能書きを飛ばしたい人は↑の「2. 分析の材料」をポチっとしてやってください。) 

【1/30 削除】

 

1. はじめ

はじめに―本論考の意義と問題提起―

 ごきげんよう、京大百合文化研究会の白雪です。

 

 「人は何をもって百合と百合でないものを線引きしているのか」―――。

 

 百合オタクの間ではしばしば議論になる、百合オタク及び百合文化研究者にとっての永遠の問いの1つだと思います。百合の定義に絶対的なものなどなく、何か1つの定義を押し付けようとしたらいろいろなものが毀れてしまう、そんな危険性すら孕んだ問いと言えるでしょう。そのため、上村(2022)をはじめとする多くの百合文化研究ではこの点について必要以上につっこまない態度をとっているように思われますし、弊サークルの記念すべき会誌第1号『Liliology Vol.1』でも「百合の定義」「百合の境界線」についての明示的な対立を取り上げることは避ける方針で編集が進められました。そしてそれは多くの場合で正解でしょう。

 

 しかし、人によって定義が違う、その「違い」はどこから生じているのかについてははっきりしていません。そのことについて考察することで、より健全な「百合とは何か」という問いかけをすることができるのではないでしょうか。

 本論文では百合の定義の「違い」がどのような点から発生するのかという問いについて、『お兄ちゃんはおしまい! 』というアニメに関して百合文研内で行われた事例を用いて、迫っていきたいと思います。

 

 

 

 

2. 分析の材料__『お兄ちゃんはおしまい!』は百合か論争(TS論争)

 

参加者紹介

月海   【月海】:本日のメイン登壇者。京大令和きらら学研究所助教授。本年度後期は「ブルアカ学入門」を開講。ミカコハは……あります。

猿渡白雪 【白雪】:本日の進行役兼メイン登壇者。コードネーム"雪華"、咲狂う時間です。

O.obscura  【オブ】:社会派百合、フィールド系百合、魚×百合を好む。「RPG不動産の世界観は旧ソ連の社会が下敷きになっている」との仮説を提唱。

レニ   【レニ】:Master of 百合(予定)

 

1st Round 百合派vs百合じゃない派の論点整理

 

〇「おにまい」は百合でない側の主張

【白雪】では早速、それぞれがなぜ『お兄ちゃんはおしまい! 』を百合アニメでないと、若しくは百合アニメだと考えてるのかについてお伺いしたいです。まず月海さんから。

【月海】はい。結論から言うと私は『お兄ちゃんはおしまい!』は百合アニメではないと考えています。その理由は、まひろ君自身もみはりちゃんも、どっちも「まひろ君が男性であることを所からスタートしていて、それで肉体が女性になって行く」というのが共通認識としてあるからです。それが顕著だったのが第2話のBパート。

【白雪】伝説の「女の子の日」回……!

【月海】はい。あのエピソードは女の子座りの話題から始まったんですけど、その時点で女性と男性の骨格の違い、そこで体と心のジェンダーギャップを感じるまひろ君が描かれてるんですよね。それをベースに兄と妹の関係を描くのが肝だった気がするのでその意味で百合じゃない、という判断になりましたね。

【白雪】まあ兄と妹というのと A パートで銭湯に行くシーンでも確かに昔はまひろ氏がお兄ちゃんが妹の髪を洗っていたなっていうところがあって、その時点で”きょうだい”を描くことにこだわってるというのは同意見だな。

【月海】あーそうですね。

【白雪】あと、心と身体が相関してるって言うのは1話やOPが特に顕著だけど、本作品で一番描きたいところなのかなとは思う。




〇「おにまい」は百合である側の主張

【白雪】仰ることはわかるんですよ、わかるんですよ、だけど『お兄ちゃんはおしまい!』は百合なんですよっていう話をしたいと思います。

 まず、何らかの意味で本作が TS ものだっていうのは認めざるをえません。でも、まひろ氏*1が転性する前が「本当に男だったのか」という問題提起を私はしたい。もし、まひろ氏の転性前の精神性が男ならば、ちょっと私も苦手とするTS百合となっちゃいます。でもまひろ氏の精神的なジェンダーは「男」ではなく寧ろ男女どちらにもカテゴライズされない「自宅警備員」と言うジェンダーだったのではないか、だとしたら男が(身体だけでも)女になった、と言うわけじゃないので百合として受け入れやすいんじゃないか、って話ですね。少なくとも私はそう受け取っています。

【月海】なるほど。

【白雪】そして、その根拠となったのが2話Bパート。女の子の日を体験する直前、まひろ氏は「男性性を取り戻す」ということで筋トレを始めるじゃないですか。でもそこで実際に描かれたのはニートとして「男性性」からかけ離れたヘタレ具合を露呈するまひろ氏だった。そこで、一話の時点から「まひろ氏に男性性ってあったのかな」って考えちゃったんですよね。

 確かにまひろ氏は美少女ゲーが好きで部屋のものも所謂男性オタクが好んで消費しそうなコンテンツが多いです。でも、いざ2話Aパートの銭湯シーンでは理性がかなり効いていて異性間ラブコメで今でもよく見られるような変態男性イメージのそれとはかけ離れている。加えて、そもそもアニメは転性薬を既に盛られて転性した後から話が始まっているのでまひろ氏が心身ともに「男」だった頃を視聴者は見ていないんですよね。なので本当にまひろ氏が転性前も精神的な性別として男だったのかとは言い切ることはできないと考えています。そうだとするとしたら転生する前でも男ではなかったのだから体も心も今女の子に近づいているという意味で百合と肯定的に捉えても良いのではないかなと思ってるんですよね

【月海】なるほどなるほど。そもそもの出発点が違ったと言うか。私が明らかにまひろ君の精神性が男性だと言うことから確定させていました。少なくても妹はまひろ君の事を「お兄ちゃん」と言ってくれていて、先ほど言及された通り肉体性の違和感は大きく描かれていたんです。けど精神性についての男性性描写は緩いところはあるかもと思いまして、なるほどとは思います。

【白雪】(肉体は)絶対的なものだからやっぱり描写しやすい所はあるかもだけど。



〇「お兄ちゃん」に含まれるジェンダー

【月海】でも本作は、「お兄ちゃんと妹」ないし「姉と妹」をひっくり返して描いていて、精神性自体もそれに対応させて男女でひっくり返して描いているのでは、と私は思いますね。

【白雪】転性する前がすでに「兄と妹」という構図は成り立たなくなっている可能性があっるんじゃないかと思うんだよね。お兄ちゃんと言うとやっぱり妹を守るだとかリードするだとか、そういう「お兄ちゃん」と言う言葉に内包されるジェンダー性があると思ってて。でも、それがまひろ氏とみはりちゃんの間では成り立ってなくて、むしろみはりちゃんがまひろ氏のお世話をしてるし。お兄ちゃんとしての立場を失って妹に対する劣等感を抱いてるっていうところが一話の終盤の方で描かれたかなという気がするんですけど、それもこの仮説の根拠になってます。

【月海】なるほどね

【白雪】2話では昔は確かにまひろ氏はお兄ちゃんとして 面倒見てたりお風呂入れてたりとかっていうところから、より明確に、成長するにつれて「自分の方が年上なのかっていうところに疑問を抱くようになってきた」「お兄ちゃんと言う男性性ジェンダー性をまひろ氏が殆ど失った」ことを描いているんだと読み解いています。

【月海】どっちかっていうと男性性自体がこの作品自体に影響を及ぼしてないと思います。作者としては少なくともそこまで意図してないと思う。その結果、アニメ1話2話時点では精神的な男性性描写が殆どなくなっているように見える、という見方の方が正しい気がします。

 

〇「おにまい」が百合になる可能性

【白雪】百合の定義が月海君と私で違うからの見解の相違なのかなぁ。私の百合の定義っていうのが「カップリングの双方の精神性が女性」ないし「男性性が含まれていない」だから。そして、「おにまい」を見た時にこのカップル(まひろ-みはり)の中に男性性がないじゃん→「おにまい」は百合じゃん! ってなったんだ。

【月海】白雪さんは非常に俯瞰してた立場から作品を見てるんだと思います。私も殆ど同じなんですが、どっちかっていうか内面関係性の方を気にしていて。まひろ君-みはりちゃんの間で二人の関係性認識としてこの人(まひろ君)は元々男だって確立されている以上、その二人の関係性の間で百合は成り立たないというのは崩すことができない。

【白雪】なるほど。

【月海】ただ、今後の展開で、まひろちゃんを元々女の子だと思っているキャラと出会い、まひろちゃん自身もある程度自分の男性性について気にしなくなっている状態であれば百合として成立するのでは、と思います。

【白雪】男と女を分けるマジョリティ的なジェンダー観を持ってる人だと月海君の整理は飲み込みやすい気がする。そこから辺からしても私がちょっと特殊だから「今は百合アニメじゃないけど……」という考えは若干迂遠な気がしちゃうな。私の持論としては性別なんて男と女二つに分けられるわけないだろっていうところが柱としてあって。

 

〇比較対象としての『龍と虎』

【月海】ダブルスタンダードって言われるかもしれないんですけど……戦国武将に転生した女子校生達が織り成す『龍と虎』って漫画作品があって。あれは全員が戦国武将から転生してるっていうのが自分でわかっていてその相手方の武将とくっつくっていう話なんですが、それは自分の中では百合判定してるんですよね。

龍と虎に関しては戦国武将戦国武将で相手方が特別な相手だから惹かれ合うって言うのが構図としてある訳で両者は転生しても惹かれあういうのがあると思っていて。TS なんですけど 存在が重要であって性に関して重要ではないから大丈夫だと思うんですよね。

 

 

【白雪】今も話を聞いて、説得できる糸口が見えてきたぞ。まひろ氏もみはりちゃんも「お兄ちゃん」とか「自分のことを男」だとは思ってるけれど、それはあくまで便宜的にそう呼んでるだけ。そこには年齢的な上下関係はあっても真の意味でのジェンダーは2人の間では関係がなくて。そう考えると『龍と虎』と同じように性は関係ないと言える……のではないでしょうか!

【月海】確かに。でもなー 、あの作品はやっぱりめちゃくちゃ TS を書こうと思って書いてるのが強い作品だと伝わってくるので。だとすると2人の関係性についてもジェンダーを捨象したとは捉えにくいかなぁ。

 

 

2nd Round 原作勢サードオピニオンを交えた議論__「おにまい」の主題とは何か

〇1st Roundの整理

(そして第三の登壇者の登場)

【オブ】まず百合の定義に関しては「女性の関係性を主題としたのが百合である」点に関して二人の共通認識にはなっていると。

【白雪】すごく綺麗にこれまでの議論の交通整理をしてくださった……!

【オブ】そして月海さん的には「おにまい」の主題は「きょうだい」であって、女の子の身体同士の百合の関係は描写としてはあるかもしれないけれど、それが主題じゃないから百合じゃないと思ってるって感じですか?

【月海】それに加えて、二人の共通認識としてまひろちゃんは元々肉体的にも、そして精神的にも元々男であるっていうところがある、って言うのがポイントですね。

【オブ】それで白雪さんがまひろお兄ちゃんは

【白雪】男じゃなかったんですよぉ!

【オブ】もともと男の子じゃなかったからまひろ氏と女の子同士の関係性百合じゃないかっていうのが白雪さんの意見なんですね。共通テスト英語リスニングの途中で挟まる謎のまとめ役みたいなポジションに私なってますね(笑い)。

 

〇「おにまい」はお兄ちゃんの変化の物語

【オブ】なるほどいやなんか言ってること両者ともにそれっぽくて、甲乙つけ難いと言うか。この作品の主題ってなんなんでしょうね。個人的には衝撃的なシーンが目立つこともあって「お兄ちゃんが女の子になっていく」変化の物語だと考えていて。それこそ2話ではじめて女の子の日を迎えたまひろちゃんにみはりちゃんがお赤飯持って来たくだりとか。

【月海】確かに。

【オブ】(女の子になる前から女の子だったのかは置いておくとしても)、「変化」と言うことは少なくとも描かれている作品だと思います。原作の最新刊付近だと、まひろちゃんは違和感なく女の子になってるんですよね。今アニメで描かれている時点とは明らかに精神的に変化がある。だから、(本作が百合かどうかは)いつの時点を念頭に置いて話してるのかによって全然変わってくると思います。原作最新刊まで見てる人の間ではさらに「おにまいは百合か」論争は泥沼化してますし。

 例えるならわたモテと近いことが言えると考えていて。あの作品、当初は「主人公がモテない」という主人公1人のことを、ネットスラングみたいなのも交えながら面白おかしく描いているっていう作品だったんですよね。それが刊を重ねていくにつれてつれて百合密度がどんどん増していった、っていう。「おにまい」にも同じことが言えて、当初はまひろちゃんが男を意識している描写が多いけれども回を重ねていくにつれて……って所があるんです。

 

 

【白雪】最新刊のあたりになるとまひろちゃんの性自認が女性に大分寄っている状況っていうことですよね。男性部分が顧みられなくなってるとまでは言えないと思いますが。

【オブ】それにしても懐かしいなー。この作品って2018年から始まってて、受験勉強の合間に更新を楽しみにしてたんですよね。

【白雪】O.obscuraさんの百合は「おにまい」から!?

【オブ】いや、私はどちらかというと「おにまい」が百合として見れるという話を興味深く聞いていた側なので。

 

【白雪】 確認になるんですけど、O.obscura君としては「おにまい」の、アニメ1・2話の時点でも「きょうだいの関係性」は主題じゃないと捉えてるってことでいいんですか?

【オブ】難しいところですね……。印象に残るのがどうしても(転性を意識させる)シーンっていうだけで関係性を主題にしてないって言い切るのは言い過ぎな気がします。原作者の意図としてもそれを主題とするのが妥当なのかな。例えばアニメ2話の時点では結構(まひろ君のみはりちゃんに対する)コンプレックスとかが描かれてるんですよね。

【白雪】そこなんですよね! そしてみはりの方もダメダメになってしまった兄を更生させたいという感情の矢印があると思っていて。こういう、妹から兄に対する何かジェンダーを越えた「きょうだい」を慮る矢印があって、まひろに関してはまひろ氏の方でコンプレックスがある。両方が同じベクトルの感情を抱いてるわけではないんですけれどその間には間違いなく何らかの矢印が発生している。そういう意味で「きょうだい」の関係性が主題なのかな、と。

【月海】関係性っていう意味では今後、他のヒロインとの関係性も……。

【オブ】実際、今後出てくるとあるヒロインとまひろちゃんはカプになりますね。

【白雪】それってみはりちゃんの出番減らない!? 悲しいなぁ。

 

 

3rd Round 百合文化研究者による口頭試問、そして……

【レニ】百合文化研究者的に気に気になるのは、百合のオタク達は「おにまい」を百合である、ないし百合でないと言うことによって何を達成しようとしてるのかなってことなんですよね。

【白雪】満を満たして百合文化研究者きたぁ!

【オブ】「百合」という概念 を考えた時に(百合かどうか)意見が分かれる、外縁にあたる作品を議論することによって「百合とは何か」「百合の可能性」を問い直すことになるのではないでしょうか。

【月海】問い直してます? 問い直してるんですかね……。

【白雪】私としてはあくまで百合愛好家として、ある作品を「百合」って認識できることでその作品を何倍にも楽しめることができる、だから「おにまい」も含めてなるべく作品を百合として捉えたいと思ってます。

【レニ】百合だとみなすことによって効用が増す、と。では月海君は?

【白雪】百合じゃないと言うことで「百合と言う名の聖域」を守ることが達成されるのかな? 

【月海】それもありますし、(問い直すことで)自分の百合の外縁を知ることで「自分が百合として許せる/許せないの境界」がどこにあるのかを知るのは面白いんですよ。

  TS ものの中でも『龍と虎』や「転天」を 百合と言ってるのに、なんで自分は「おにまい」を百合とカテゴライズしないのかって考えるのは実際楽しかったです。

【レニ】その結果傷ついてる人がいるかもしれないけれども……。

【白雪】結局はその考えをぶつけたりしない限り自分たちで勝手にやってくれと思っていて、「こうしたら楽しく見れるんじゃないですか」っていうセカンドオピニオンを提供しようとしてるだけなので。

【レニ】ちなみにセカンドオピニオンに対するファーストオピニオンは何を想定してるんですか。

 【白雪】「おにまいは百合じゃない」を想定してましたね。私の主張としては実はこうじゃないんですよ、って提示したいというか。

【レニ】 その実はじゃないものって何なんですか。

【白雪】「実は……」じゃない、(数秒思案)。それは正直に私が素直に見たら「おにまい」は百合じゃないって思ってて……ダメダメ、ここ纏まってないのでカットしてください!

【オブ】まとまってないところを寄せることで Twitter の誰かが補完してくれると言う。

【白雪】それ補完という名の炎上してないですか?

【月海】怖い怖い怖い怖い。

【レニ】間違ったこと書いてなければ、我々は間違っててないですからね。

 

【白雪】閑話休題、ということで。

【レニ】さっきの話をちょっと真顔で言い直すと、「おにまい」が(百合であるかどうか)賛否分かれる作品だということは間違いないので潜在的には百合でないということは認めているということでよろしいですか?

【白雪】……はい。

【レニ】ちなみに月海君は「こういう見方をしたら実は百合なんじゃね?」って言う見方はあったりするの?

【月海】白雪さんの話を聞いて、そういう思考でこの作品をやりって捉えてもいいと思いますね。その立場を今後私がとるかどうかは置いとくとして、白雪さんの言った話も、理論自体は理にかなっていると思います。そういう見方もあるんだなっていう感じかなと思いますね。まあ私の見方は変わらないんですが。

【オブ】これが対話による歩み寄りです!

マルタ会談におけるブッシュ大統領(米)とゴルバチョフ総書記(ソ)の写真。

 

【白雪】「ただ女の子(の姿をしてる2人)がイチャイチャしてるように見えるから百合だよ」って言ってるわけじゃないっていうことが伝われば私の役割を終えたかな。

【レニ】ただイチャイチャしてるだけで百合と見られたら困るんですか? 

【白雪】私、博士課程進学の口頭試問でも受けてるんですかね

【レニ】気になります、博論で引用するかもしれないので。

【白雪】ご回答すると、私の百合の定義まで戻る必要があって。私自身、百合と言うものを精神的な女性性・もっというと精神的に男性でないところに求めていて。だとすると、肉体面にから百合と言うのは、少なくとも私の考えとは相容れないとなってしまうのですよ。

【レニ】ちなみに女の子がただイチャイチャしてるで百合だと主張する仮想敵はいたりするんですか?

【白雪】……いわゆるきらら派閥?

【月海】きらら学非常勤講師として、きららほぼ全ての作品が少なくとも男女関係が入ってない作品は基本的には百合とみなしていいと考えていますね。

【オブ】(白雪と月海が)凹凸みたいな感じではまってますね。

【月海】きらら作品は内的な男性性/女性性を描いていない、だから基本的には心と体のジェンダーが一致しているんですよね。女の子しか出てこなければ百合になると思うんです。それに対して、「おにまい」については精神性が男から始まっているところが揺るがない事実としてあって、兄と妹と男と女との関係性が発端として始まっているから百合だとは思えなかった。

【白雪】私と月海君の間で2つの言葉に定義の違いがあって。まず「百合」と言う言葉に、私は精神性しか求めないけれど月海君はどちらかと言うと総合評価。

【月海】総合評価......

【白雪】 そして、「男女の概念」について、私は男女に分けられない境界を非常に緩く取るのに対し、月海君の方がマジョリティー的なジェンダー観で、そこで(おにまいに関する解釈の)違いが生じたのかなっていうのは持ってますね。

【オブ】それ面白いですね。分岐分類学者と進化分類学者の並行する会話を聞いてるような感じですね、違う種概念を適用する人同士の会話、みたいな。

【レニ】O.obscuraさん的には? 白雪さんの話を聞いてどう思いました?

【オブ】私の百合の定義みたいなのは結構日によって変動するみたいな感じなんですけど、言葉で表せって言われたら女性と女性の関係性を主題に置く作品だと思います。なので百合要素がある≠百合作品で、「おにまい」もそういう作品なんです。少なくとも注釈無しで「百合作品」とは言えないかな。

 

 

Final Round 議論のまとめに代えて

【白雪】原作から知っている人として、今回のアニメ化は理想的だったかどうかとか、アニメ化する前に予想していてその通りになったこととかありますか?

【オブ】アニメ化に際して一つだけ、「この作品は百合ファン及び百合文化研究者の間で百合かどうか大論争になる」って予想してたんですけど、それはまんまと的中しましたね。

【月海】それは間違いない。ソースはこの討議。

【オブ】だから、この討論の様子を世に出す意義は私としてはあると思いますね。ジャンルの境界近辺にある作品についてきちんと討論する事で開かれたジャンルとして見られるのではないかと思います。

 

〇「おにまい」の「きょうだい」要素

【オブ】「おにまい」って百合要素があることは前提とするとして、それ以外にどんな要素で構成されている作品なんでしょうね。

【白雪】「きょうだい」要素……? 『干物妹! うまるちゃん』に近い波動をこの作品から私は感じてる。

 

 

【月海】物語としてもそうですけど、同時に確かに自分が兄ないし妹の人はまひろ氏のコンプレックスとかを重ね合わせて見ると言う側面はありそうですよね。

【白雪】確かに私も兄がいるから、兄が自分のことどう思ってるんだろう、って思いながらまひろ氏のコンプレックスのシーンは見てたわ。まあそんなの本人に聞けるわけないんだけど。

【オブ】特殊事情が介在しない限り、きょうだいっていうのは一定の時期まで文字通り同じ屋根の下で暮らして、同じものを食べて成長してきたわけで、気にせざるを得ない存在ですよね。

 

〇「おにまい」のTS要素の解像度

【オブ】あと、先ほども言及しましたけれどTS要素はやっぱり大きい。TS描写の解像度が高いからこそ、男性視聴者はまひろ君に自分を重ね合わせで見ることができるのかなと思ってますね。むしろ私はここら辺の要素が(アニメ1話2話の時点では)大きいと思ってます。

 まあ、話を重ねるにつれてまひろ君がだんだん女の子っぽくなってくるので、そういう意味で「これはもしかしたら百合として認めざるを得ないと思う日が来るのではないか」と受験生の時に読みながら思ってましたね。

【白雪】まひろ氏の変化については声優さんの演技が1話と12話でまひろちゃん、ないしまひろ君の声がどんな感じに変わるのかっていう所を通しで注目して見るのも面白いかもしれませんね。

【オブ】 今期TSものは多いですけど、まひろ君のあのキャラだからこそ、TSの解像度が圧倒的に高いからこそ、その要素として今期の中でも秀でた作品になるのは間違いないと思います。

 

〇仮説:「おにまい」はオルタナティブきららである!

【白雪】あと、まひろ氏の更生物語、っていう要素もあるのかな。そういう意味で、百合要素さえ認めてくれれば月海君の提唱するオルタナきららになるポテンシャルがあるんじゃないかなと思う。

 

 

【オブ】オルタナきららとは……?

【月海】私が提唱している概念ですね。私は最近のきららの本質を「作中で主に日常を描きつつ年月の経過と共に自己実現や成長が描かれている」ところだと考えています。その良い例としては『またぞろ。』や『星屑テレパス』などでしょうか。古株の作品の中でも「ごちうさ」などはこの特性が顕著に現れていると思います。

【オブ】ほうほう。

【月海】そして、考えてみるときらら作品以外にもそういう、本質的にきららに通じる作品があるんじゃないかっていうのが自論でして。例えば『Do it Yourself!! -どぅー・いっと・よあせるふ-』とか、「学園と青春の物語」である『ブルーアーカイブ』とか。そういう作品をオルタナきららと呼んでるんです。

【オブ】月海さん的に「おにまい」はその定義に入るんですか?

【月海】オルタナきららの定義に百合かどうかは入れてないので、オルタナきららとして「おにまい」を位置づけるのは全然いけると思いますね。「日常の中で肉体性の違いを通じて徐々に兄妹間の関係性や自己について見直していく」という構造の時点で十分”自己実現を描く”って要件を満たしているので。 

【オブ】ではそろそろいい時間なのでまとめに入りますか。

【白雪】結論はみはりちゃんが可愛いということで。

【月海】結論それでいいんですか?

【オブ】①女性同士というところの定義をどこに置くかによって、あるいは②「おにまい」が関係性を主題に置いてるかどうかによって、「おにまい」が百合かどうか人によって違いが出ることが今回の討論で明らかになったのではないかと思います。

 百合かどうかという極めて普遍的な問いに対して示唆を与えるような時間になったかと。少なくとも不毛な議論ではなく意義のあるお話だったと思いますね。

【白雪】皆さんありがとうございました!

 

 

Extra Round 「転天」と「おにまい」は本質的に同じ?

【白雪】今期の百合アニメ『転生王女と天才令嬢の魔法革命』も、転生した主人公のアニスの転生前の性別がわかってなくて、百合オタクの一部からアニスは転生前の男性でTS百合だから百合じゃないんじゃないか、って話があるんです。

【月海】作者さんが Twitter でマシュマロかで聞いた際に一連の騒動にはなっているんですよね。作者的には(アニスの転生前は)男女どちらか考えてないし、そこが重要じゃないっていう話はしてますね 。「キャラクターに転生前の記憶と想いを思い出させること」自体に意義があり、だからこそアニスのキャラクター性が生まれたっていうきっかけが重要で、ジェンダーは関係ないっていう話なんですよね

【白雪】でも、この話についても「おにまい」に関する私のここまでの論理から言えばすっきりと百合アニメとして見られる、っていう話をしたいですね。

 

 

〇アニスは転生前に本当にジェンダー分化していたのか

【白雪】これから話す私の仮説は恐らく作者の見解と矛盾してないと考えてるんですが、大前提として私は、転生前のアニスは性的にはっきりとは分化してなかったんじゃないかと捉えています。もっと言うとアニスは転生前を(ジェンダー的に明確に分化する前の)子供の時しか過ごしてない可能性があると思ってます。すると、転性直前に「男」でなかったまひろ氏が転性したから百合作品だ、という「おにまい」に近いことが言えると思えませんか? 

【月海】また独特な発想ですね。根拠とかあるんですか?

【白雪】まずは1話のアニスが転生前の記憶を取り戻したシーン。そこでアニスはまず第一に、「魔法があるんだったら空を飛べるよね」って言うんです。そこでまず私は引っかかったんです。 OL とかだったらもうちょっと違うこと言いそうで、いい意味で子供らしい、夢のある発想だなぁ、って。そして空を飛ぶということ自体はジェンダー中立的だ、という所もこの仮説のポイントです。子供っていうのは(大人に比べて)ジェンダーに未分化的な側面があると言えるのではないでしょうか。だから、アニスは「女性でも男性でもない存在から転生した」→百合として受け取りやすい、と言えると思うんです。

 

〇転生前のジェンダーが描かれていないことによる効果

【月海】それについては異議を申し立てたいですね。本作では転生前のジェンダー性を一切問題にしていなくて、転生前のジェンダーがどうであれ、少なくとも私達に提示されているアニスの肉体性と精神性が女性として描かれている、という事実だけがあるっていう解釈の方が正しいと思います。

【白雪】月海君の今の話と私の仮説は矛盾はしないんじゃないかな。そもそもジェンダーとして分化してないと想像することによって転生前のジェンダー性を問題にしなくてよくしたい、っていうのが私の仮説だから。そして、転生前のジェンダー観がない状態からスタートしてるから、アニスフィアという王女として、あの年齢からの成長がスタート出来たのだという所まで含めて私は考えています。そう考えると、「転生前にジェンダーが未分化だった」というのがもしいえるなら、アイテムとしてうまく機能してますよね。

【月海】ジェンダー的に分化しているか否かはさておいて。転生前のジェンダー性がアニスのアイデンティティに対して強烈な影響を与えたという描写は存在していないので、確かにあり得る仮説かもしれませんね。

【白雪】ただ、「おにまい」と「転天」を比較すると前者が2話Aパートの銭湯の回想シーンとかで明らかに「お兄ちゃん」というジェンダー性を持っていた時期があったことが描写されているのに対し、「転天」では何度か指摘された通り明らかにアニスが男性だった時代の描写はない。だから、「転天」は「おにまい」以上に百合として受け入れやすいのではないかという印象はありますね、転生前のジェンダー如何に限らず。

【月海】転生前のジェンダーを積極的に予想するかどうかは置いておくとして、結論としては白雪さんと私は同じなのかなと思いますね。その人のキャラクターや人格を形成するにあたって転生前のジェンダー観っていうのは些事であると捉えている点、少なくとも人格に追随する内的な性に影響するものではないからそれ以外で描写されているところから素直に受け取っていいんじゃないかなって考えてます。

 

 

 

 

3. 考察と結論

 以上、『お兄ちゃんはおしまい! 』は百合かどうかに関する議論の過程でした。一見とりとめのない議論のようでいて、よく見てみると「なぜ人によって百合の定義に違いが生じるのか」という問いについて3つの視座を与えてくれる議論になったのではないかと思います。

 

 まず1つ目は「ジェンダー観」の違いによるもの。百合とは女の子複数人の関係である、という定義は一見、万人に受け入れてもらいやすいですが、そこでいう女の子とはどこまでを差しているのか、ジェンダーについて非常にセンシティブな人ではそもそもの百合アクターにどこまでが入るのかが変わってくる、と言う可能性がこの議論では示されました。

 2つ目は百合の本質に「関係性」をどこまで読み込んで判断に組み入れるか、というもの。一口に関係性といっても、ただ「きょうだい」関係が描かれていればそれでいいのか。「関係性」を成立させている2人ないし2人以上のアクターが互いのことを(性別としてどう見ているのかを含め)どう感じているかについてどこまで読み込み、それを百合の定義に反映させるのか。それによって今回のTS論争では大きく結論に差が出ました。

 そして3つ目は作品の主題をなんだと受け取るのか。そもそも作品の主題を「関係性」ととるのかどうかによって結論に大きな差が生じました。

 

 ここで挙げられた3つの百合かどうかの判断が分かれる視座だけによって全ての百合か百合でないか論争における意見の違いを説明できるとは思いません。しかし、ここに挙げた3点は確かに「百合か百合でないか」の意見の違いの背景にあったもの、それが少しでもはっきりとさせられたのなら、この稿は何らかの役に立てたのではないかな、と思います。

 この記事を読んだことで読者の一人でも『お兄ちゃんはおしまい! 』の新しい楽しみ方を見つけたり、もっと広く、「百合」に向き合う姿勢に何らかの涵養が得られたのだとしたら幸いです。

 

 

おまけ__場外乱闘(不参加者のコメント)

無理数】途中で話題に上がった『龍と虎』は女子高生が武将の記憶を持っているという設定で単純な転生ではなかった気がする(未読)。この辺の話題は『幼女戦記』のタニャヴィシャは百合か?とか『清楚なフリをしてますが』は百合か?とかと並べて話してみたい。記事にしたら炎上しそうだから身内で済ませたいけど。閑話休題、「おにまい」含めこういったファンタジー的要素が絡む百合及び周辺作品の百合性に関してはそのファンタジー部分の作中での定義やそれに対する読者各人の作品鑑賞やジェンダー観に対するスタンスに依存するところが非常に大きく、また特定作品のみでの特殊事情が発生しやすいがゆえに、一定の合意が形成されないままで何時まで経っても議論が終わることは無いんだろうなあと思う。逆に、このことを理解しないまま雑に自分の中の定義だけで武装して放言してる奴ばっかだとオタクたちは不毛な学級会を永遠に続けることになるから、よいこの読者のみんなは気をつけてくれよな!

 

【だち】自分は原作未視聴・未読ですので個人的なTS観を投げつけるだけにしておきます。まずTSは性別が変化した自分の性自認を問い直す、その過程が重要だと考えていて、TSものを「男か女か」の話に収めようとすることがあまり好ましくないと思っています。TSが起こっている人物の性別については男でも女でもない、「性別:TS」とでも呼ぶのが自分の見解で、これを百合に含めるのは現在の自分の百合観ではどうやってもできそうにありません。百合観と絡めた話までここに書くと長くなりすぎるので、とりあえず上に挙げた「性別:TS」という概念を(まだ固まった定義というのは全くありませんが)ひとつ提唱してこのコメントは締めといたします。

*1:まひろ君ないしまひろちゃんと呼ぶのが正しいのかが曖昧になるため、以下白雪はこのように呼称。